Happily Ever After

□Happily Ever After
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UP DATE:2020/08/18 write by kaeruco。
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その苦労の割に、女性たちが全く恥じらっていなかったのもアレなのだが。

「日本ではあんたたちに合うサイズの衣類の調達が難しくてな。今は間に合わせで浴衣を羽織って貰ってる。明日にでも百貨店の外商に取り寄せを頼むから、そこの用紙にサイズと贔屓のブランドがあれば記入しておけ、とのことだ」

 そう一輝が言った所で紫龍が用紙と筆記具を渡して周り、瞬は白湯を飲み切ったそれぞれのティーカップに温かい麦茶を注いでいく。

 蘇ったばかりの彼らの肉体は長期間の絶食状態に近く、飢餓感を強く覚えているのに飲食をしても内臓が受け付けない。
まずは刺激の少ない飲食物で慣らしてから、という意図を最初に振る舞われた少量の白湯から察した彼らはおとなしく従ったのだ。

 先程デスマスクが文句をつけようとしたのは、わざと因縁をつけてより自分たちに有利に情報を引き出そうという交渉術だったのだろう。
一輝には通じない、と見たアフロディーテが割って入ったのも同様。

「なあ、聖域にあったオレらの私物はどうなってる?」

「ああ、あんたたち3人の私物はまとめてそれぞれの客室に運んである。後で片付けておいてくれ」

 3人が自分の宮などに残していた私物はまとめて倉庫に一時保管されていたので、そのままこちらに移してあった。
もし彼らが蘇らなければ、喪が明けた頃に聖域の財産として聖闘士たちに分けられたり、売り払われて資産化されていただろう。

 だが聖域に13年もの間居ない事になっていたサガと最初から存在を隠していたカノンには私物などなく、生活に必要な物を1から揃えなくてはならない。
それを面倒な、と思う一方で欲しい物を伝えれば向こうから持ってくる外商なるシステムにはブルジョアめ、と悪態を吐きたくなるのを一輝は堪えた。

 父親だというあの男が遺した物を兄弟たちを守る為に使うと決めたのは彼自身である。
こういったことにも慣れなくてはいけない。

「他に何か必要な物があればこの邸の使用人に頼め。あんたたちはお嬢さんの客人として扱われているから、大概のわがままは通る」

 明らかに不必要な贅沢品なんかはお嬢さんの執事が怒鳴り込んで来るだろうから程々にな、との言葉に嬉々としてペンを走らせていた1人の手が止まる。
どうやら期待通りの事をやるつもりでいたのだろう。
同じソファに座る者がそれを論って、もう1人が2人を宥める。

 そんな普通の友人同士のようなやりとりを眺め、一輝は深く息を吐く。

「……まったく、賑やかどころかかなり騒がしくなりそうだな……」

 こうして、蘇った元黄金聖闘士の反逆組と聖戦を戦い抜いた青銅聖闘士たちとの奇妙な生活が始まった。
 
【続く】 
‡蛙娘。@iscreamman‡ 
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WRITE:2020/08/17〜2020/08/27 
UP DATE:2020/08/27 
 
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