Happily Ever After

□Saint School Life
3ページ/46ページ

UP DATE:2017/05/05 write by kaeruco。
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

 Saint School Life
【Happily Ever After番外編】
00:編入試験


 戦女神と冥王による聖戦は今回も多大な犠牲を出したものの長年の因縁に終止符を打った女神の勝利で終息し、地上に平和が訪れた。
建前上は。

 女神の意向により聖戦で失われた聖闘士や冥闘士、ついでに海闘士を復活させたはいい。
が、海皇と女神の間でシードラゴンの海将軍と双子座弟の処遇を巡って再び争いが起きかけ、更に仲裁に入ったはずの冥王までもアンドロメダ座である自身の依坐と鳳凰座となった依坐の守護者の返還を女神に求めた事で事態は完全に混乱した。

 聖戦時以上の険悪ムードに陥った3神の諍いを治めたのが、当事者たる鳳凰座とアンドロメダ座。
聖戦から蘇った闘士たちは戦う能力を失ったただの人として復活しているのだから、今更聖闘士も海将軍もないだろうと海皇と女神を言いくるめ、冥王にも現状は聖闘士であるが依坐であることは変わらないからわざわざどちらの所属と明確にする必要はないと諭す。

 彼らの言葉に3神とも1度はごねたのだが、一介の聖闘士の脅迫まがいの物言いに負け、結局は黙って頷いたのであった。
そして揃って、鳳凰座とアンドロメダ座の聖闘士を本気で怒らせる真似はしないと誓い合ったという。

 その上で地上と海界、冥界の間で和平協定が結ばれる事となり、生き残った聖闘士はこのやっかいな3神が再び何かしでかさないよう見張り役を務めることとなったのである。

 それはともかくとして。

 地上を治める戦女神には人間としての顔があった。
日本有数の資産家である城戸家の若き女主人であり、グラード財団の総帥にして流星学園に通う女子中学生、城戸沙織。

 しかし、その肩書きと資産は女神を養育した今は亡き城戸光政翁の実子たちが受け継ぐべきものであった。
にも関わらず、光政翁は数多くいた己の子を全員孤児として扱い、男子だけを女神を守る聖闘士とすべく世界に点在する修行地へと送り出したのである。

 結果、生き残って聖闘士となれた者は10名余。
世界のためとはいえ父親の非情な決断に、己の出生を知って怨みのあまり女神や兄弟たちへ拳を向けた者もいた程だ。

 だからこそ平和を取り戻した今、戦女神は考えたのである。
自分を守る為に犠牲となった多くの兄弟たちや、生き残った聖闘士たちの為に光政翁から受け継いだ物を使うべきなのでは、と。
本来なら彼らが受け継ぐはずだったものを、少しずつその手に返していくべきなのではないか、と。

 そこで沙織が提案したのが、まだ少年である聖闘士たちを学校に通わせることであった。

 しかし、それは未だ義務教育の範囲にある者たちにとっては決定事項とも言える。
なにしろ本人の意思ではなく、保護者都合で義務教育を受けさせない場合は『就学義務違反』であり、彼らには教育を受ける権利がある───かつて修行地へ送られるまでの1年間を小学校へ通わせる事なく城戸邸で過酷な訓練を行い、本人の意思を無視して単独で海外へ渡航させた件はより重大な犯罪であるのだが、これはもう今更だ。

「皆さんによりよい教育を受けてもらうことは、あなたたちの保護者たる私の義務ですから」

 城戸家の広間に住人を全員集めた沙織は、自身が総帥を務めるグラード財団が運営する学校───グラード学園へ聖闘士たちの編入をそう宣言したのであった。
もちろん、義務教育の年齢を過ぎていた年長の3人───檄、一輝、蛮も。

 この決定に不満を持つのは、あまり勉学が好きではなく得意でもない星矢くらいのもので、彼の意見は黙殺された。
向学心の高い瞬や紫龍らには歓迎され、群れる事を嫌う一輝ですら了承した以上、今更学校なんて、と口を尖らせて拗ねる星矢に味方はいない。

「それはそうと、編入試験はあるんだろう?」

「ええ、それはあるでしょうね。どれくらいの学力があるか確認する意味合いも含めて」

 一輝の問い掛けに答えながら、沙織は星矢を見やる。
いや、彼女だけでなく、その場にいた城戸家の全員が。

「……な、なんだよ?」

 一応、帰国した後の事も考えて、グラード財団名義で世界各地に派遣した聖闘士候補生には学齢に相応しいテキストを持たせていた。
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ