Happily Ever After

□Saint School Life
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UP DATE:2020/11/23 write by kaeruco。
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 Saint School Life
【Happily Ever After番外編】
05.5:課外活動の行方


「……それで結局、どうしたんだ?」

 夕食後に風呂の順番待ちを兼ねて勉強室で課題を片付けていた一輝は弟たちから今日の学校での出来事を聞き、肝心の部活動見学がどうだったのかを尋ねた。

 瞬に妙な言い掛かりをつけて絡んできた同好会の面々は学園の方で処分されたと聞いているから、今回の事で動くつもりは今の所ない。
懲りずにまた何かやらかしたら、その限りではないが。

「気になった部活動を幾つか見学させてもらったんだが、園芸部に入る事にした」

 不愉快な話題を断ち切りたいのか、珍しく紫龍が真っ先に話出した。

「学園内の庭木の手入れ以外に作物を育てる畑もあってな、環境問題や農業被害の勉強会もしていると聞いて興味が湧いたんだ」

 いや、中国の奥地で体力作りを兼ねて農作業をしていただけあって、農業者としての意識が強いのかもしれない。
そう言えば、園芸番組などはかなり真剣に見ているし。

「ミーは軽音同好会ザンスよ」

 ギタープレイの真似事をしながら市が語る。

「ジャンル違いだけどやたらギターの上手い後輩と、話の合う先輩がいたのが決め手ザンスね」

 市が修行していた地域はヘビィメタルが好まれていて、その影響なのか彼の音楽の趣味は兄弟の中では独特だ。
話の通じる同好の士がいる、というのは個性的な兄弟の中にあっても浮く事がある彼にとっては良い事だろう。

「俺は、写真同好会」

 星矢の選択は意外ではあったが、離れて暮らす姉と手紙でやり取りする際に身近な風景や孤児院で共に育った幼馴染みらの写真を添えているのを知っているから、なるほどとも思う。

「本当は運動部入りたかったけど、ダメだってみんな言うからさー」

 本人としては不本意な選択だったようだが。

「……オレは、マナー部に入る事にした」

 揶揄される覚悟か気合いを込めて宣言する邪武へ、彼が沙織の補佐をしたいと願っているのを知っている兄弟達は良い選択をした、と穏やかに肯定した。

「……いずれ、お嬢様のお力になるにも、全くの礼儀知らずでは恥をかかせるだけだからな」

 からかいそうな末っ子の口は気を回した精神的長兄が課題の間違いを指摘してやったら、気が逸れたらしい。

「俺たちの学年は課外活動は義務じゃないが、一度くらいは同好会か委員会には入って学生らしい活動もしてみたいな」

 蛮の言葉に一輝も頷くが、週1回の登校で財団の仕事もしている彼にそんな暇は無さそうである。

「兄さんが部活動か同好会入るなら、僕も同じ所にしたんだけどなあ」

 残念そうに呟く瞬は幾つかの同好会を見て回ったが、未だに決めかねているらしい。

「ボランティア活動してる同好会が幾つかあってね。昔、施設に読み聞かせとか人形劇とかやりに来てくれた人たち思い出して。ああいうの、僕もやってみたいなって」

 そう言えばそんな事があったな、と施設育ちの兄弟達が興味を示したり、他の同好会でも協力しあったりしていると話し出す。

「あー、なんかあったな。やたらグイグイくる奴らが遊びに来る事。あれ、学生ボランティアだったのか?」

「優しいお姉さん達が来てくれるのは楽しみだったザンスねえ」

「学園で活動してるボランティア系の同好会は病児学級の授業補助もしているのか……」

「そういえば、園芸部で育てた植物や作物を提供したり、施設の庭の手入れに参加したりしているという話も聞いたな」

「あー、それオレんとこも。施設育ちだとさ、あんまり写真って撮らないじゃん。だから、施設の行事とかイベントの写真撮りに行くんだって」

「そうなんだ。じゃあ、一緒にボランティア行ったりできるかもね」

 そんな風に盛り上がってると勉強室の扉が開き、首にタオルを引っ掛けた檄が入ってきた。

「風呂空いたぞー」

「おう。じゃ、お先」

「お先ザンスー」

「あー、オレまだ終わってねぇから誰か先行ってー」

「なら、先行かせてもらうな」

 バタバタと机の上を片付けて蛮と市が立ち上がり、星矢の代わりに邪武が続いて出て行く。
 
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