Happily Ever After

□Saint School Life
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[6.5-1]
UP DATE:2023/12/11
write by kaeruco。
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 Saint School Life
【Happily Ever After番外編】
06.5:女神のお夜食




「兄さん大変! 沙織さんが!」

「一輝! 助けてくれよー!」

 実弟と末っ子が自室に飛び込んで来た時点で、一輝は大体の状況を察していた。
それでも、ため息一つで読み掛けの文庫本を閉じてローテーブルに放り出し、弟2人に説明を求める。

「落ち着いて話せ。何があった?」

「今日のお昼ご飯の話をしてたら、沙織さんも食べたかったって言い出して」

「邪武が辰巳に確認して、昼飯はいらないって返事してたらしいんだけどさー」

「沙織さん本人には伝わってなかったから、知らなかったみたいで……」

「今、辰巳と邪武が沙織さんに怒られてる」

「なるほど。分かった」

 予想通り、情報伝達の行き違いから女神には話が伝わっていなかったようだ。
一輝は事態を収拾すべく立ち上がると、自室を出て厨房へと向かう。
弟2人には15分程掛かるから、その間、できるだけ邪武を擁護してやれ、と居間へ戻るよう伝えるのも忘れない。

「さて、やるか」

 厨房に入るや手を洗い、必要な食材を見繕った一輝はまず冷凍庫から取り出したミックスベジタブルと白米を耐熱ボウルに入れ、チキンコンソメの顆粒を振り掛けてからラップをして電子レンジで解凍。
解凍している間にジャガイモとタマネギを角切りにして小鍋に溶かしたバターで炒める。
解凍されたミックスベジタブル入りのご飯を切り混ぜながらケチャップや塩胡椒で味をつけ、今度はラップを掛けずに水分を飛ばす為に10秒程電子レンジで加熱する。
完成したケチャップご飯はラップを使って三角形に握り、冷ましておく。
洗った耐熱ボウルに炒めたジャガイモとタマネギを移してしっかり火が通るまで電子レンジで加熱している間、空いた小鍋に半量の水とブイヨンを入れて沸騰させておく。
ジャガイモに火が通ったら小鍋に戻し、牛乳を加えて沸騰させないよう煮る。
玉子をしっかり溶いてから薄焼き玉子を焼き、半分に切ってケチャップご飯に巻きつけてオムすびに仕上げる。

 オムすびを2つ載せた皿にミルクスープのマグ、そしてこんな事もあろうかと残しておいたフルーツ寒天を添えれば拗ねた女神へ捧げるお夜食の完成だ。

「さて、これで機嫌が治ればいいんだがな……」

 2人分の夜食をトレーに乗せ、一輝は居間へと向かう。



 
★ ☆ ★ ☆ ★




 一輝が居間の扉を開けるや、室内に取り残されていた兄弟たちが一斉に安堵の息を吐いた。
重苦しい空気にため息を隠さず、一輝は正座する辰巳と邪武を傍にむくれてソファに座り込んでいる沙織へと声を掛ける。

「お嬢さん、夜食を入れる余裕はあるか?」

「……あります」

 視線で邪武を立ち上がらせ、辰巳もソファに座らせてから今日の昼食に居なかった2人にお絞りを手渡す。
そして2人が手を拭いている間に皿とカトラリーをローテーブルへ並べた。

 その皿を見た食欲旺盛な育ち盛りの兄弟たちがそわそわしだしたが、一輝は気にせず女神らにメニューを説明する。

「今日の昼飯の再現、とまではいかんが。オムライス風のおむすびと、ミルクスープ。それと昼の残りだが、フルーツ寒天だ」

「まあ!」

「……これをお前が?」

 訝しげな執事に顔を顰めつつ、一輝は2人を促す。

「口に合うかは知らん。まあ、食ってみろ」

「美味しそうだわ。いただきます」

「むう。いただこう」

 しっかりと手を拭いた2人はオムすびを手に取った。
綺麗に焼き上がった黄色い薄焼き玉子に包まれたケチャップご飯のオレンジに鮮やかなミックスベジタブルの色彩が楽しい。
その上、一口頬張れば優しい甘さと野菜の旨みが広がる。

「美味しいわ、一輝!」

 無邪気に喜びを表して二口目を頬張る女神と、何故か不可解という表情で一つ目を平らげる執事。

 間にミルクスープをマグから啜ればケチャップの甘さを和らげつつ、更に安心感を覚える程の旨みに感嘆のため息が漏れた。
二つ目も完食し、スープも飲み干した後は冷えたフルーツ寒天で夜食は締め括られる。

「とても美味しかったわ。ありがとう、一輝」
 
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