Happily Ever After
□Saint School Life
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UP DATE:2020/09/17 write by kaeruco。
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「あー、言っちゃ悪いけど、お前と兄ちゃん、全然似てないのな……」
「それは僕が母さん似で、兄さんはすごく男らしい人だから仕方ないのは分かってるんです。だけど、すっごく気にしてるんであんまり言わないでください……」
そしてそれは、幼い頃から一輝の地雷でもある。
単なる印象としてならともかく、からかいや蔑む目的で揶揄した者は誰であろうと肉体言語で黙らせていた幼い兄の勇姿を瞬はしっかり覚えている。
折角仲良くなれたクラスメートを不用意な一言で失うのは、兄の心痛を思えば仕方ないと思えるけれど少し悲しい。
「あのさ、瞬くんって、お兄さん、大好きなの?」
「ええ。僕の兄さんは世界一カッコいいですから!」
藤宮の含みある問いに、瞬は少しの照れも躊躇もなく、花が綻ぶように笑って答える。
その笑顔に何かを確信した藤宮は左手を強く握りしめて何らかの衝動に打ち震えそうな体を必死で堪え、難波は心底微笑ましいという声音で一輝に問いかけた。
「城戸くん、弟さんと仲がいいんだねえ」
「他の兄弟がどんなものか知らないが、悪くはない……」
一輝が比較対象と出来る兄弟は互いを利用しあっていた暗黒の双子か、行き違いを拗らせた末にとんでもない事をやらかした黄金の双子くらいだ。
射手座と獅子座や、鷲座とその弟などの関係性は詳しくないが、どの兄弟もサンプルとするには極端過ぎる。
まあ、一輝と瞬を日常的に見ている者たちに問えば「彼らが不仲だったら、この世に仲の良い兄弟などいない」というような答えしか返らないだろう。
そんな会話をしているうちに階段を降りきり、難波が背後を振り返った。
「弟くん、購買は第2校舎側だよ。で、城戸くん、男子更衣室は第1校舎側だ」
「あ、じゃあ俺らここでー」
「瞬くん、行こー」
普段交流のない上級生と一緒では居心地が良くないのかそそくさと離れようとするクラスメートに構わず、瞬は兄の腕を取って強請る。
「兄さん! お昼休み一緒にお弁当食べましょうね。星矢たちも呼んで」
「構わないが、クラスメートはいいのか?」
「兄さん、月曜日しか学園に来ないでしょう? だから、今日だけでも僕らと一緒に食べましょうよ」
声を潜めて「午前中の星矢たちの様子、確認しといたほうがいいと思うんだ」と付け加えれば、一輝としても気になっていた事なので了承するしかない。
「わかった。昼休みにな」
そんな兄弟のやりとりを眩しそうに眺めていた藤宮は岸川に促され、名残惜しげな瞬と共に購買へと向かった。
下級生たちと別れて未だぼんやりしている喜田を引っ張って更衣室へ向かいながら、難波は一輝へ確信を持って楽しげに問い掛ける。
「城戸くんって、弟くんに弱くない?」
「……否定はせん」
その言葉に、曝された彼の弱点が同時に逆鱗でもあると察し、扱いには注意しなきゃ、とクラスメート2人は己を戒めた。
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2020/09/10 〜 2020/09/17
UP DATE:2020/09/17