Happily Ever After

□Saint School Life
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UP DATE:2020/09/26 write by kaeruco。
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 大きなタッパーからバランス良くおかずを消費しながらおにぎりも食べ進む2人に対し、他の兄弟たちに比べればかなり小ぶりの───多分、標準サイズであろう弁当を持て余していた一輝は実弟のお願いにはすぐに了承を返した。

「時間がある時なら、構わない」

「一輝、マヨネーズが足りない」

 好きなおかずだけを先に食べ尽くした氷河が製作者に抗議するが、この重度のマヨラーに合わせて全部マヨネーズ味にする気はない一輝は自分の弁当箱から手付かずだったポテトサラダを融通してやるだけで済ませる。

「それで、お前たちのクラスメートはどうだった?」

 周囲に生徒がいるから敢えて何がとは言わず、一輝は全員に問いかけた。

「うん、大丈夫みたい。みんな良い人だよ」

「ああ、問題はない。初対面でも親切にしてくれる」

「遠巻きに騒ぐ女生徒はいるが」

 瞬と紫龍の報告に氷河は頷き、檄と蛮も拍子抜けしたと付け加える。

「面接で大丈夫だとは分かっていたが、やはり初めて教室に入る時は緊張した」

「クラスメートは普通に迎え入れてくれたからなー。まあ、瞬じゃなくてガッカリはさせたが」

「そうだな。でもフォローしてくれる奴もいて、逆に申し訳なくなったな」

「みんな良いザンスねえ。アタシなんてちょっとクラスで浮いてる気がするのに」

 那智の報告にオレのクラスもだと頷き、市が浮かないクラスというのは多分この学園にはないと全員が考えていた。
邪武と星矢も同意し、最後に一輝に尋ね返す。

「オレも一緒だな。いい奴ばかりだ」

「だよなー。で、一輝はどうだったんだよ?」

「通信クラスだから全員は居なかったが、ちゃんと受け入れられたさ」

 初日にこうして揃って昼食を取っているのは何も瞬がブラコンを爆発させたからでも、クラスに馴染めない可能性の高い個性的な兄弟のボッチ飯回避の為でもなかった。
とある確認をする為であり、ただ瞬が兄と一緒にお弁当を食べたかっただけではない。
───そんな思惑は一切ない、とも言えないが。

 かつてグラード財団主催で行われた聖闘士による格闘トーナメント《銀河戦争ギャラクシアン・ウォーズ》の記憶が一般の人々から消えているのか、確認しあう為だ。

 多くの人間に個人で戦略兵器並みの戦力を誇る神の闘士───聖闘士の存在が知られているのは神々としてはよろしくない。
人間同士や国家間の争いに聖闘士を駆り出そうと考える者は出てくるだろうし、実際に聖闘士の能力を持って神に成り代わろうとした者がいる───サガとカノン、そして一輝だ。
そうさせない為に人間の記憶からこの催しを抹消しようとしたのだが、神々が地上や人間に干渉するには支配権を持つ戦女神アテナに無断でとはいかなかった。
下手を打てば侵略と見做され、聖戦が再発してしまう。
なので面倒くさい交渉の末に、建前として失われた聖闘士たちを復活させる代償として、神々による人間の記憶の改竄を受け入れる事になったのだ。

 色々不審な点や不穏な言い回しが見受けられても、そういう事に落ち着いたのだから、もう蒸し返してはいけない。
今、ここは、そういう経緯を経て存在している世界なのだ。

「兄さん、午前中は体育だって言ってたけど、平気だった?」

「ああ。着替える時に背中の傷で驚かせてしまったが、皆察してくれたからな」

 傍目には負っていた怪我の再発を案じる弟に、クラスメートが気遣ってくれたと報告する兄のやりとりに見えるだろう。
まさか、うっかり超人的な身体能力を披露していないかの確認とは思わない。
誰も聖闘士など存在している事さえ知らないのだから。

「えー、一輝体育やったの!? ずりぃー! いいなー、何やった?」

「50m走の計測と、フットサルの見学だ。クラスメートにプロクラブのユース選手がいてな、そいつとリフティングしてた」

 内臓に大きな怪我をしていてまだ運動の許可が出せない───という診断書を出されて体育の見学を厳命されている末っ子が羨ましがるのを承知で、精神的長兄は初めての体育の様子を語ってやる。
体育の授業に出たいなら、さっさと普通の人間の動きに慣れろ、という発破だ。

 実際に自分が授業を受ける時の参考にするつもりか、紫龍が質問してくる。

「50m走の記録って何秒くらいなんだ?」
 
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