Happily Ever After

□Saint School Life
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UP DATE:2020/09/30 write by kaeruco。
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 瞬の携帯の待受は金髪で美人なお姉さんとのツーショットで、それが年上の女性の友人ガールフレンドだとは本人も認めた事だ。
けれど、彼女が瞬にとって日本語的な意味でのお付き合いしている女性ガールフレンドなのかまでは誰も確かめていない。

 第一、瞬の携帯のメモリいっぱいまで保存されているのはほぼ大好きな兄さんの画像であり、休み時間毎に幸せそうに眺めてはかっこいいかっこいいと呟いていたのもそれだ。
クラスメートたちは学園中の噂になっている美少年編入生が極度のブラコンである、と初日に悟らざるを得なかったのである。

「瞬くん、お兄さんのお見送り間に合ったかなー」

「さっきの弟くんファインプレーだったね」

「めっちゃ困ってたもんなー」

「瞬は兄ちゃん大好きだからなー。間に合わなかったら絶対落ち込むぜ」

「だよなー」

 クラスメートらの会話にを耳にした女生徒たちは怒りや羞恥で顔を真っ赤にし、苛立たしげに教室を出て行った。
さすがに先ほどの言動は悪印象を与えただけでちっとも相手にされていなかった、と匂わされているのに追いかけていける程、厚顔無恥ではないらしい。

「いやー、美少年も大変だねぇ」

「顔が良けりゃ人生勝ち組ー、とか思ってたオレがバカだった……」

「肉食女子おっかないもんね。あー、平凡顔で良かったねぇ」

 慰めになっていない慰めに、その生徒は素直に応えられなかった。

 
★ ☆ ★ ☆ ★



 逃げる星矢を昇降口で捕まえた瞬は、まず携帯電話から先ほどの画像を消去───しなければ携帯電話毎消去する、と警告した上で自主的に消去───させ、続いて走った事を注意する。

「星矢、君、自分が大怪我した(設定になってる)の忘れてるでしょ?」

「あんなの走ったうちにはいんねぇよ」

 早足で追いかけた瞬が追いつけたのだから、と星矢は言いたいのだろうが認めるわけにはいかない。
お調子者な末っ子がついうっかり超人的な能力を発揮して他の生徒に怪我をさせてしまう可能性がある以上は。

「あんまり無茶したら、沙織さんに言うよ。そうしたら、いつまでたっても体育解禁の許可でないからね」

「えー、なんでだよー」

「最初からそういう約束だったでしょう?」

 互いの下足箱が近かったので、靴を履き替えながらお小言と言い訳を交わしていると聞き慣れた声が近づいているのに2人は気づいた。
履き替えた上靴を下足箱にしまい、揃って4年生が使っている下足箱へ向かう。
思った通りに一輝が午前中にも一緒だったクラスメート2人と談笑しながら靴を履き替えていた。
週に1回しか登校しない一輝は上靴を持ち帰るようで、靴袋に突っ込んでからカバンに放り込んでいる。

「兄さん!」

「よう、一輝」

「瞬。星矢も一緒か」

 飛びついてきた瞬を難なく受け止めた一輝はそのまま左腕に取り付いた弟を気にせず、近くにいたクラスメートに新たに出現した弟を紹介する。

「喜田、難波。コイツが末っ子の星矢だ」

「へぇ。なんだか、瞬くんより星矢くんの方が城戸くんと顔つきが似てるね」

 作家なだけあって観察眼の鋭い難波が触れられたくない所を指摘してくる。
弟2人はちょっと緊張した表情になったが、一輝はなんでもないように流した。

「ああ、良く言われる」

「うーん、如何にも事情有りって感じだけど、こんな所で話すような事でもないか。ごめん、変な事言ったね」

 ただ、兄弟3人の反応から何事かを察したのか、それ以上は追求してはこなかった。

 5人はそのまま昇降口を出て前庭を通り抜けて正門へと向かう。
どうやら星矢はスポーツマンの喜田と、瞬は難波と話が合うのか、間に一輝を挟んで交流している。
クラブユース所属の喜田が語るプロになる道筋の険しさに感心し、作家として活動している難波から普段読む本の傾向をリサーチされながら。

 正門を出て柵沿いに大通り方面へ歩くとバス停とタクシー乗り場を備えたロータリーがある。
喜田と難波は最寄駅までスクールバスを使い、そこから電車でクラブハウスか自宅へ向かうのだそうだ。
 
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