Happily Ever After

□Saint School Life
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[7-2] UP DATE:2024/01/19
write by kaeruco。
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「そっかー。って、だったらオレだってクラスメート連れてきたのにっ」

「お前、クラスで話す男子いんのかよ?」

「い、居ない訳じゃねえけど……」

 邪武の指摘に星矢は口籠る。
クラスでは瞬や氷河、紫龍について聞きたがる女子に囲まれている為、男子生徒からは遠巻きにされているのだ。
男子だけの授業ではちゃんと声を掛けてくれたり、班に入れてもらえるのでハブられてはいない。
ただ、女子たちが群がり過ぎて男子が声をかけにくいだけで。

 こんなクラスで星矢が瞬と食堂に行くから誰か一緒に来てくれ、と声を掛けたなら手を上げるのは女子生徒だけなのは火を見るよりも明らか。
そして、壮絶な争奪戦が始まるのは確実だ。

「……モテるって大変なんだな……」

 城戸兄弟のやりとりを聞いていた垣ノ内がぼそりとため息混じりに呟くと、間髪を入れず佐橋が噛み付く。

「何言ってんだ。慎こそ毎日部活で女子にキャーキャー言われてるだろうが」

 中学2年生ながら身長170cm半ばあり、バレー部のアタッカーとしてレギュラー争いをしている垣ノ内は校内では有名人らしい。
同じ部でリベロのポジション争いをしてる佐橋が僻むくらいに。

「バレー部の垣ノ内くんが去年のモテランキング上位だったのは俺も知ってるー」

 文化祭で恒例となっている企画をネタに岸川も尻馬に乗るが、当の垣ノ内は涼しい顔だ。

「あれは単に名前の知られてる生徒に票が集まる有名ランキングじゃないか。きっと今年は城戸兄弟が上位独占で、俺は選外になるぞ」

「あー」

「デスヨネー」

 佐橋と岸川にも、瞬に加えて城戸兄弟の金髪の人と長髪の人で3枠は埋まるだろうと想像がついた。
下手をしたらここにいる末っ子2人も票を貰うかもしれないし、瞬が常にかっこいいかっこいいと言っているが殆どの生徒には顔を知られていないお兄さんももしかする。
そうなればランキングの過半数が城戸兄弟で埋まるだろうから、昨年ランク入りした面々も安泰ではない、と垣ノ内は語った。

 しかし、前年ランキング外だった生徒には全く関係のない、別次元の話である。

「岸川、俺らは強く生きていこうな」

「啓吾だ、同士よーすけ

同士けーごっ!」

 結果、謎の連帯感が岸川と佐橋に生まれ、固い握手によって新たな友情が芽生えた所で、一行は生徒たちでごった返す食堂の入り口に到着した。

「うおっ! すっげぇ混んでんなっ!」

「だろー? 出入り口の動線、もちょっと整理して欲しいよなー。あ、食券買ってある?」

 邪武が食堂の盛況ぶりに気圧されて叫ぶも、岸川らには見慣れた光景である。
2時間目の終わりに確保した食券を手に、飲み物や食券の自動販売機やパンや弁当などのカウンターに並ぶ列を避けて食堂へ入ろうとしていた。

「え、啓吾と瞬はもう食券買ってんの?」

「あ、星矢も買ってないなら俺と並ぼうぜ」

「席は取っておくよ」

 事前に食券を買っていなかった星矢と佐橋は券売機の列に並び、用意していた瞬と邪武、岸川と垣ノ内は席を確保するために食堂の奥へ向かった。
まだ空いていた壁際の1卓を無事占拠し、空席がない事を示すために手早くお茶を淹れてきてテーブルに並べる。
星矢たちがまだ券売機の前に並んでいるのを確認し、瞬と岸川を留守番に邪武と垣ノ内が料理を取りに行った。

「こんな風に席取りするんだ」

 初めて訪れる学食を物珍しげに見渡す瞬に、岸川はお茶を飲みつつ利用の心得を説く。
周囲から向けられる羨望と困惑の視線は敢えて無視だ。

「今日は晴れてるから余裕あるけど、雨の日は普段外飯してる生徒も食堂利用するせいでテーブルや椅子に物置いてても目離した隙に席取られるからなー」

「そうなんだ」

「まあ、1人なら割とどこでも相席頼めるし、瞬なら誰も断らないだろうなー」

「うーん、どうだろう」

 そんな話をしているうちに垣ノ内と邪武が戻り、交代で瞬と岸川も料理を取りに受け渡し口へ並ぶ。
どうやら星矢と佐橋も無事に食券を買えたようで、少し前に並んでいる。

「カレーと定食はここでご飯と味噌汁、セルフでよそうんだけど……」

「あはは。それくらいはお邸でもやってるよ」

 トレイを手に取りながら心配そうな視線を向けてくる岸川へ、瞬は2枚のトレイを手に笑って受け流す。
 
 
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