Happily Ever After
□Saint School Life
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[7-4] UP DATE:2024/01/19
write by kaeruco。
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]乗っている天ぷらは春菊と紅しょうが多めの小エビのかき揚げだが、濃い蕎麦のつゆに小エビや春菊の風味が出てそれなりに美味しい。
席取りの為に淹れたお茶もしっかり飲み干し、6人は食事を終えた。
「ふう。ごちそうさまでした」
「食ったー」
「やっぱりラーメンやカレーはうまいなー」
久々に庶民の味を堪能してのんびりしている兄弟へ、食べ終えるや席を立ってトレイを手にしたクラスメートたちはしたり顔で告げる。
「学食は食べ終わったらすぐに席空けるのがマナーだぜ」
「あと食器は自分で返却カウンターに持って行くのもな」
「最後に席離れる奴はテーブル拭いとけよー」
その言葉に慌てて立ち上がってトレイを手にした3人は、両手が塞がっていた。
誰が拭くべきか、と顔を見合わせる城戸の末っ子トリオへ垣ノ内は笑ってテーブルに置かれていた布巾を手に取る。
「今日は俺が拭いとくから、さっさと食器返してこいよ」
「うっわ! 垣ノ内、そーゆーとこだわー」
「行動までイケメンかよー。けーご、俺らも先行こうぜ」
岸川と佐橋が揶揄し、邪武や星矢を促して返却カウンターへと向かった。
瞬はどうしたものか、と垣ノ内を見やるが、行っていいとジャスチャーで示される。
「ありがとう、垣ノ内くん」
それだけ告げて兄弟の後を追った。
「やっぱりあったかい飯いいよなー」
「夏場は冷やし中華も出るぞ」
「冬になったらあったかい麺類のありがたみが増す」
「そっかー」
そんな会話に加わりながら、瞬は改めて思う。
学食も値段相応に美味しかった。
けれど。
───やっぱり兄さんのご飯が1番だなあ。
★ ☆ ★ ☆ ★
その同じ時刻。
グラード財団の職員用食堂へやってきた海外支援部門代表の城戸一輝は、己の片腕を自負する双子たちの手にしたトレイを見て溜め息を抑えることができなかった。
山盛りの丼飯なのは想定の範疇。
定食の小鉢が何故か追加されているのも。
ただ、メインのおかずが全部載せになっているのはどういう理屈なのか。
「大丈夫です、代表。不正はしていません」
清廉潔白と言わんばかりの顔でサガが語るには日替わり定食の鯖の塩焼きと鶏の唐揚げ、両方の食券を買って一つの皿に盛って貰ったそうだ。
しかしながら、更にトンカツやコロッケまである理由にはなっていない。
胡散臭い事この上ないサガを真似た微笑を浮かべたカノンへ視線を向ければ、しれっと真相が暴露される。
「配膳担当のご婦人方がサービスしてくれたんですよ、一輝様」
それは予想していた。
いたが、まさか配膳担当の全員が何かしら一品ずつサービスしてくるとは誰が思うのか。
改めて、この双子の顔面と外面の良さを実感した一輝は言うべき事だけは言っておく。
「貰った以上は絶対に残すなよ」
「もちろんです」
普段の彼らの食事量を鑑みれば完食は容易いだろう。
だが、油物が多いので後で胃もたれしそうだな、と一輝が考えていると、カノンが眉を顰めて問いただしてくる。
「そういう一輝様は、それだけですか?」
先にテーブルに着いていた一輝の前にあるのは1杯のかけうどん。
それだけである。
給料日前で金欠のサラリーマンじゃあるまいし、10代半ばの少年の昼食にしてはあまりにも質素だ。
「それだけでは栄養が偏ります」
「これも食ってください」
そう言うや、双子は揃って小鉢を押し付けてくる。
サガはナスの煮浸し、カノンはキンピラゴボウだから、それぞれ食べられなくはないが苦手な食材なのだろう。
これは引き受けてやってもいいか、と一輝は観念する
「分かった……」
しかし、食い切れるかな、とも。
【続く】
‡蛙姑。@iscreamman‡
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WRITE:2023/12/14〜2024/01/19
UP DATE:2024/01/19