Happily Ever After

□Saint School Life
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UP DATE:2024/03/10
write by kaeruco。
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 内容も、剪定した木の枝の運搬、模様替えに伴う家具の運び出し、資源ゴミの分別など長くても30分も掛からない簡単な軽作業ばかり。
その分、金額はお駄賃程度ではあるが。

「1回のお手伝いで貰える額は多くないけど、毎日何かやってたら結構貯まるよ」

 ほら、これなら今すぐやれるし。
そう言った瞬の指が捲り取った付箋には、資源ゴミ分別と記されている。

指定時刻はちょうどこれから。
場所は厨房の裏口だ。

「サンキュー、瞬! これから行ってくる!」

 瞬の手から付箋を引ったくり、星矢は駆け出した。
その背に瞬はもう一つ、アドバイスを送る。

「あ、ついでだから明日のお弁当も頼んできたら?」

「そーだった! 節約節約ー!」



 
★ ☆ ★ ☆ ★




 星矢が邸内バイトをするべく向かった厨房の裏口で待ってたのは料理人見習いのカニ(仮)である。

「よう、坊主。バイト希望か?」

「カニ(仮)が雇い主なの?」

「俺様はバイト希望者が来なかった時に仕事をやらされる下っ端だ。来てくれて助かったぜ」

 そう言って裏口脇に積まれたゴミ袋を1つ開け、中から空き缶を取り出して見せる。

「これからやるのは資源ゴミの分別だ。瓶はこのカゴ、缶がこっち、プラがこっち」

 言いながらひょいひょいと仕分けるカニ(仮)を真似、星矢もゴミ袋を1つ開いて分別に加わる。

「アルミ缶とペットボトルは潰してからいれろよ。嵩張るからあっというまにカゴがいっぱいになる」

「オッケー」

 アルミ缶やペットボトルを足元に置いて踏み潰しては拾いあげ、カゴに入れていくカニ(仮)を他所に、星矢は両手で押し潰してはカゴへ放り込む。

 たまに飲み残しのペットボトルや瓶が見つかる。

「中身入ってんのは避けとけ。後でまとめて処理すっから」

「りょーかーい」

 中身を捨てて分別するのは後回しに、2人は分別と圧縮作業を続ける。

「なー、厨房のバイトって他になにがある?」

「今んとこはゴミの分別だけだな。食材の搬入に人手が欲しいって声はあるが、お前らが学校行ってる間の仕事だから無理だろ?」

 単純作業にすぐ飽きた星矢の質問にも、手さえ動かしていれば文句のないカニ(仮)はちゃんと答えてくれるようだ。

「じゃあ、夏休みとかならできるやつ?」

「あー、そん時ゃ頼めるのか。あと、お前らのにぃちゃんが飯作る時に野菜の皮剥きくらいか」

「そっか。それならオレもできそう」

「ほんとか?」

「これでも、聖域にいた頃は魔鈴さんの手伝いはしてたんだぜ。そりゃ、一輝みたいにはできねえけど、野菜切ったりはやってたって」

「なら期待しとくぜ」

 2人がかりで雑談しながら手を動かしていれば、4つほどあったゴミ袋は瞬く間に分別が終わる。

「よし。これで明日の朝、当番のヤツが回収場所に持ってけるな。手洗って、終わりにすっぞ」

「あー、ベッタベタになった」

「お前手で潰してたからなー」

 厨房の出入り口に設置された洗い場で2人揃ってしっかりと手を洗った所で、星矢が持ってきていた付箋にバイトを受けた星矢と指導係のカニ(仮)がサインを入れた。

「ほい。報酬だ。無駄遣いすんじゃねーぞ」

「ありがとう、カニ(仮)。あ、弁当ってまだ頼めるか?」

 明日の昼飯を頼むのを思い出した星矢が尋ねれば、カニ(仮)が厨房の見やすい所に掲示されたホワイトボードの下の方へチェックを入れた。
どうやら家人の食事の有無など、料理人や給仕で共有する情報が書かれているらしい。

おうシー。量はいつも通りか?」

「おにぎり多めにしてくんねえ? 足りなくて放課後買い食いしねえように」

了解シー。2個プラスにしとくわ」

 そう言いながら、カニ(仮)がホワイトボードに備考として『+2』と書き加える。

「サンキュー! んじゃな、カニ(仮)」

 これで安心、と星矢はお駄賃を握りしめて意気揚々と厨房を後にした。

 尚、お手伝いで渡されるお駄賃のと引き換えた付箋は作業報告書として家令の元で保管される。
 
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