Happily Ever After

□Saint School Life
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UP DATE:2017/05/08 write by kaeruco。
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そして、彼らを保護して帰国させ、日本で改めて教育を受けさせたいという意図も青少年の育成と教育を掲げて創立されたグラード学園の意義に適っているはずである。

 ただやはり、面接という短時間での会話なら誤摩化せても、学校生活に馴染んでからが危険かもしれない。

「……体育の授業で聖闘士の能力を隠し切るのは、難しいかもしれんな……」

「……そうだよね。特に星矢と邪武はお互い意地を張り合ってボロを出しそうな気がするよ……」

 懸念を口にする一輝に同意するように瞬もあり得そうな出来事を述べれば、その光景がありありと見えた沙織が思わず額を押さえた。

 聖闘士だからと言って、常日頃から小宇宙を燃やして音速や光速で行動している訳ではない。
けれど、ちょっとした反射行動───落としそうになった物を受け止めたり、といったとっさの動きが既に超人の域にある。
多少の怪力ぐらいなら体格の良い檄や蛮辺りは誤摩化せるだろうが、正直なところ小柄な星矢や華奢な瞬の方がずっと力が強いのだ。
体育の授業でうっかり本気を出しでもしたら、音速を超える物体の移動によって生じる衝撃波───通称:ジェノサイド・アタック───によって周囲にいるクラスメートの肉体は四散し、校舎は全壊するだろう。

 それにずっと俗世間から隔離された幼少期を過ごしてきた所為で、聖闘士となった兄弟には日本の一般常識が欠如している。
一輝たち年長組は1年だけ小学校に通った覚えがあるが、瞬たち年少組は幼稚園や保育園にすら通えなかったので社会性と協調性がどれほど育っているのか不明だ。
特にロシア生まれでシベリア育ちの表現の奇行子がどこまで順応できるか全く見当もつかないし、一見常識人な紫龍だって天然ボケの気がある。

「……事ある毎に氷河がマーマとか我が師とか口走ったり、事ある毎に紫龍が脱衣したりしたら、どうしましょう?……」

「……市の言動とルックスはもう矯正不可能だよね。那智は普通だし、大丈夫そうだけど……」

「……俺は、厄介な連中に絡まれそうな気がする。瞬、お前も変な輩に言い寄られるんじゃないか?……」

 街を歩けば確実に時代錯誤で粋がった若人や、ちょっと脛に傷のある大人達から因縁つけられるであろう鋭い眼光を眇めた一輝。
同じく、けれど別の意味で多くの少年少女たちの目を惹き付けるであろう華やかな微笑で毒舌を吐く美少女めいた瞬。
どちらも厄介な人々から呼び出されたり呼び止められたりするのは想像に難くない。

 改めて見回してみれば、本人たちだけの責任とは言いがたいけれど、揃いも揃って問題児ばかりの兄弟たちだ。

「……まあ、なるようになるでしょう……」

 それでも、気掛かりは幾らでもあったが、決めてしまった事は仕方がない。
問題が起きたらその時、と沙織は腹を括るしかなかった。


 
★ ☆ ★ ☆ ★



 さて、それから数日後───5月の大型連休の最中。
休校中のグラード学園を後見人である城戸家の顧問弁護士と共に訪れた兄弟たちは、それぞれの学齢に合わせた編入試験と個別に面接を受けた。
もちろん、事前に───主に星矢への───勉強の集中特訓と、これまでの暮らし振りについての口裏合わせが行われた上で。

 その結果。

「皆さん、よく頑張りましたね。全員、編入許可がおりましたよ」

 一部、かなりギリギリの点数を取った者も居たようだが、知恵の女神より和やかに合格が告げられたのであった。

 こうして、聖闘士である城戸家の兄弟たちは初めて学校生活を送る事となったのであるが、それはやはり想像したとおりにはちゃめちゃなものとなるのである。

 
【続く】 
‡蛙娘。@iscreamman‡ 
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WRITE:2017/05/05〜08 
UP DATE:2017/05/08
 
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