Happily Ever After

□Golden Japanese Diarys
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UP DATE:2020/08/24 write by kaeruco。
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 Golden Japanese Diarys
【Happily Ever After番外編】
02:clothing 02〔衣類 その2〕


 城戸邸で共に暮らす事となった戦女神アテナこと城戸沙織に青銅聖闘士の兄弟たち───檄、一輝、蛮、那智、紫龍、氷河、市、瞬、邪武、星矢。
それと元黄金聖闘士造反組───サガ、カノン、デスマスク、シュラ、アフロディーテ。
総勢16名が暮らす事となっても豪邸たる城戸邸ならば何も問題はない。

 住環境はそれぞれに居間や衣装室付きの個室が当てがわれ、練度の高い使用人によって邸内は常に隅々まで掃除が行き届くだけでなく、全てが使いやすく整えられている。
もちろん家具や調度品、食器やアメニティといった目につく物が悉く一級品であり、幼い頃から孤児として苦労してきた少年たちの中には返って尻の座りの悪い思いをする者さえいたけれど。

 また、腕の良い料理人も多数雇われているから育ち盛りで食べ盛りの少年が10人と大食漢や食道楽な居候が居た所で食事が滞る事もなく、全国各地から城戸光政翁を恩人と慕う人々が折に触れて名産の作物やら魚やら肉やらを送ってくれるので食材も豊富だ。
料理が趣味だという居候が暇を見て有り余る食材で腕を振るい、育ち盛りでどんなに豪勢でも3度の食事とおやつだけでは物足りない欠食児童たちの腹を満たしている。

 しかし、文明と隔絶された人の生活限界地域のような所で長年修行に明け暮れていた者たちの普段着から学生ならば制服などの学用品、仕事をする者ならその内容に相応しい衣服、そして城戸邸で暮らす以上はいずれ必要となるフォーマルなど衣類はほぼ一から揃えなければならないのはかなり手間取っていた。

 何しろ、服を買いに外出する際に着る物すら無い者が居るのである。
しかも彼らの体格は、日本ではその辺の衣料品店で簡単に調達できるサイズではない。

 とにかく旅先の個室内で寛ぐ旅行者という体裁にはできる浴衣を羽織らせ、本人の衣服の趣味とサイズを聞き取ってから百貨店の外商に何着か見繕って持ってこさせてなんとか近所への買い物へは出られる格好にはできた。
上着やシャツにパンツといったアウターウェアだけでなく下着や靴、それとヘアブラシや髭剃りといった雑多な生活小物まで、数人が数日困らない量を1度に揃えるのは搬入する外商もかなり大変そうではある。
しかし、海外からのゲストが着替えの入ったスーツケースを飛行機の乗り換えでロストして滞在先で全部買い揃えるというのは良くあるようで、それほど不審には思われなかったのは幸いか。

 だからその日、全員揃っての朝食の席で、この邸の主人たる沙織が本日の予定を一方的に宣言しても有難いだけで、不満に思う者は居ない筈であった。
何しろ彼らのワードローブには学生服とご近所へちょっとした買い物に出かけるようなワンマイルウェアくらいしかないのだから。

「今日はお爺様が贔屓にしていたテーラーを呼んでありますから、全員夏用のスーツを仕立ててくださいね。特に一輝は財団の仕事で着るのだから、最低でも3着は必要かしら?」

 しかし、名指しされた一輝としては服など着られれば良い物であり、仕事用にスーツは要るだろうとは考えていたが、居候たちや同年の兄弟たち程には標準から離れた体型でもない為、態々フルオーダーまでする必要性は感じていなかった。

「……オレはその辺の吊るしで良かろう……」

「一輝。あなたには城戸家の1人として我がグラード財団の1部門を任せます、と伝えた筈ですよ? 私と一緒とは言いませんけど、せめて関連企業のパーティーには出て貰わないといけないの。恥ずかしくない装いをしてくれなくては困るわ」

 城戸の名で仕事をするなら、取引相手に安く見られてはいけない。
要は装いはハッタリ、肩書きと身につけている物でしか相手を評価できない俗物を騙くらかせ、ということだ。
そんな理論は鼻で笑ってやりたい所だが、後に続くであろう兄弟達の足枷になるような真似をする訳にもいかず、一輝も渋々了承するしかない。

「……分かった。だが、何をどう選べばいいかも分からんのだがな……」

 一輝の途方に暮れたような声に沙織は、手荒れなどしたことのない指先を額に押し付けてため息を噛み殺す。
 
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