Happily Ever After

□Golden Japanese Diarys
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UP DATE:2020/09/23 write by kaeruco。
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 Golden Japanese Diarys
【Happily Ever After番外編】
04:Precautions 01〔注意事項 その1〕


 これは、戦女神に反逆した元黄金聖闘士たちが新たな生活を始めた日の出来事である。
 幾つかの質問と応答の最後に、一輝が不可思議な忠告をした。

「……ああ。それから、この国にいる間は風呂入る時以外、出来るだけ服を着てろよ」

 その視線は左隣に座ったカノンから対面のアフロディーテとシュラ、デスマスクをなめて右隣にいるサガで止まる。
どうやら彼の中では裸族疑惑が完全には払拭されていないようだ。

「……そ、それは当たり前じゃないか。今はまだこのユカタしかないが、ワードローブが揃えばちゃんとした格好をする」

 同じソファに座った一輝とカノンから疑いの目を向けられ、サガは必死に弁解する。
その焦りようが信憑性を失わせているのだが、誰も指摘してはやらない。

 それはそれとして、一輝は理由を説明し出す。

「この国は地球上でも屈指の地震多発地帯でな、大地震の2割はこの国が震源だ。有感地震も日に数回は起きる」

 これは4つもの大陸プレートがひしめき合いながら地殻へと沈んでいく───いわゆる大地の終わる場所のほぼ真上に国土があるからで、今この瞬間にもどこかのプレートと共にマントル層へ引き摺り込まれてもおかしくない、非常に不安定な土地である事が原因だ。
正直、なんで日本人はこんな危険な島に住んでいるのか、と自分もその1人でありながら一輝は疑問を抱く。

 ただ長年の経験と最先端の技術により多くの建物は頑健に造られていて、他の地域なら多数の死者を出すような大地震に襲われても揺れが収まるまでは建物内にいる方が安全だ、と付け加えて一輝は続けた。

「これは良くある話なんだが、余り地震に慣れていない外国人がホテルで就寝中、地震に驚いて何も羽織らずに部屋を飛び出してしまう事がある」

「つまり、裸で寝るなってことだな?」

 双子の兄から視線を逸らさず確認するカノンに頷き、一輝はまだヘラヘラしている対面の3人に向けて告げる。

「本人が恥をかくだけなら放っておくがな。建物は無事でも割れたガラスや陶器が散乱した廊下や道を裸足で歩くのは怪我を増やすだけだし、状況によってはそのままの格好で一晩屋外で過ごすか、より安全な所に避難しなけりゃならなくなる。だから、できるだけ、ちゃんと服を着ておけ───という話だ」

 もうお前たちは聖闘士じゃないんだから、と付け加えればようやく事の重大さに気付いた3人からふざけた空気が消えた。
なんらかの危機的状況に陥っても小宇宙でなんとかできた以前とは違う、と蘇って初めて実感したのかもしれない。

「それに、この邸には俺の兄弟とお嬢さんが住んでるんだ。弟たちに変な物を見せて貰っては困るし、お前たちも地震に怯える情けない姿を女神には見られたくはあるまい?」

 その言葉に、居候たちは一斉に頷いた。
兄弟たちに悪影響を与えたなら彼に抹殺されそうだが、それ以上に女神の前に己の全てを開陳するなど恐ろしくてできやしない。
神話の中で女神の沐浴を覗き見た者には苛烈な罰が与えられるものだし、その逆もただではすまない気がするのだ。

 約1名、既にやらかしているサガはともかくとして。

 
★ ☆ ★ ☆ ★



 それから数日後───百貨店の外商を使って取り寄せた衣服や品々により、居候たちの生活が一定のサイクルに乗り始めた頃だ。

「……本当に毎日、地震が起きているのだな……」

 朝食後に居間で新聞を見ながらサガが独言る。
気にしているのは天気欄の近くに掲載された国内で起きた地震の記事だ。
幸いにして城戸邸のある地域ではまだだが、確かに他国では多大な被害が出そうな規模の地震が毎日国内のどこかで起こっている。

 あまり地震に見舞われた経験のないサガとシュラは気にしすぎているのか、少し寝不足気味だ。
おかげで地震の規模を表すマグニチュードだけでなく、日本独特の震度なる揺れ幅の表示形式にも慣れたのは怪我の巧妙か。
 
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