Happily Ever After

□Golden Japanese Diarys
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UP DATE:2020/09/26 write by kaeruco。
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 Golden Japanese Diarys
【Happily Ever After番外編】
06:food 02〔食べ物 その2〕


 明日から学園に通うという前夜、夕食も済んだ城戸邸の厨房を乗っ取ったのは頭にタオルを巻いて前掛けをした───まるで有名ラーメン店の店主かと見紛う姿の一輝であった。
助手として洋食のコック服を着崩したカニ(仮)を従え、まずは手順の確認である。

「まず米を洗って浸水させる。それから野菜の下拵えしながら、煮抜きを仕込む」

「ニヌキってなぁ、茹で玉子ウォーヴォ ソドだな? 野菜は根菜と葉物で分担か?」

そうだシィ。根菜は洗ってそのまま蒸すか切って下茹でする物があるし、葉物も下茹でするからな、その時に決めよう」

了解だ、にぃちゃんシィ カポ。なら、肉や魚は煮物やってる間に仕込みだな?」

「ああ。じゃ、やるか」

 会話の途中でイタリア語が混じるのは互いの語学学習を兼ねているからだ。
一輝の修行地がスペイン語を使っていたのでイタリア語なら大まかには通じるのだが、名詞や発音には多少の差異が出る。
カニ(仮)も日本語の会話に問題はないが、料理用語は煩雑で膨大なのでまだ全てを理解しているわけではない。
そこで、この機会に互いに埋め合おうと取り決めたのだ。

 しっかりと手を洗ってから大きな笊で1升の米をゴミを浮かせて糠を落とす程度に洗い、コンテナに移して5割増しの水に漬けながら冷蔵庫で2時間程水を吸わせる。
これを5升分仕込むのだが、米と水が入ったコンテナひとつで5kgにもなるので現役の聖闘士と元聖闘士にとっても中々の重労働だ。

 それが終われば大振りのフライパンに指1本分程の水を張って20個程の玉子を入れ、火をつけたら沸騰するまで菜箸で玉子の上下を返していく。
面倒だが、これをやっておかないと黄身が偏って味の染み方にムラがでる。
沸騰したら蓋をして5分、その後火を止めて5分蒸らしたら水にとって冷ませば完成だ。
タイマーをセットし、次の作業に取り掛かる。

 相方が泥を落としてくれたジャガイモに包丁でぐるりと1周切れ目を入れて蒸し器に放り込み、ニンジンは皮を剥いてサイノメ切りにして下茹でしておく。
ホウレン草は湯がいて冷水にさらし、水を切って一口大に。
ゴボウもささがきにして水にさらしておき、タマネギは用途別にみじん切りとクシ切りにしていく。
他にもピーマンやセロリなど弟たちの何人かは苦手にしている野菜も細かく刻んだりはするが、容赦なく使う。
ホウレン草は少し甘めの白和にし、セロリを生姜とキュウリで酢の物にした。
最後に固いカボチャを一口大に切って鍋で砂糖をまぶしてから蓋をしておく。

「煮抜きも冷えたな。殻を剥いておくから鶏肉を頼む」

「唐揚げ用だな? 鯖はどうすんだ?」

「カレー味で唐揚げにしたいんで、同じサイズに」

「じゃあ、鳥は塩か? しかし、どうにも醤油味が多くなるよなぁ」

「そうだな。煮抜きはトマトにするか……」

「お、なら任せてくれや。オレ様特製のトマトソースがあるからよ」

 殻を剥き終えた玉子をソース担当に託すと今度は、蒸し上がったジャガイモが熱いうちに皮を剥いて潰していく。
最初に切れ込みを入れていたおかげで布巾で包み込んでぐるりと回せばすぐに剥けるのだが、それでも熱い物は熱い。
慣れない者がやれば両手の平を火傷してしまうだろう。
潰したジャガイモに下茹でしておいたニンジン、水煮のグリーンピースとコーンを加えてマヨネーズとヨーグルトで和えていく。
塩と胡椒で味を整え、隠し味に練乳で甘味を足す。
製作者の特権として2人で味見をし、出来上がったポテトサラダは保存コンテナに詰めて冷蔵庫で明日の朝まで待機だ。

「……うまいが、物たりねぇ。ハムかツナ入れねぇか?」

「明日の朝にしよう……」

 そんな風に予定の変更を話し合いながらカボチャの水が出たところに調味料を足して火にかけ、ツナ缶の油で千切りにしたピーマンを炒める。
 
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