Happily Ever After

□Golden Japanese Diarys
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[9-5]
UP DATE:2023/12/11
write by kaeruco。
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

兄弟たちが楽しげに、たっぷりとケチャップを使って自分の名を書き上げていく様は大変微笑ましかった。

 文字を覚え始めた子供に自分の名前を書けるようになりたい、と思わせる手段でもあるらしい。
なるほど、それならばやる気も出るだろう、と納得していたら次はお前な、と居候たちもケチャップを手渡されて困惑したが。

 ケチャップを更に掛けたらお前たちには甘くなり過ぎるだろう、と一輝がやらなくていいと言外に告げてくれたが、あまりにも兄弟らが楽しそうだったので居候らも悪ノリした。
ケチャップが多過ぎてもチリソースで多少は誤魔化せる、と聞いていたのもある。

「むしろ惨劇にならなくて幸いだった」

「……ああ、そうだな……」

 まだ書くには慣れない日本語と、カニ(仮)以外は扱った事もない屋台などで使われるケチャップの容器に悪戦苦闘しながら居候たちは銘々のオムライスに自分の名を書き入れた。
それはそれでたのしかったのだが、最後に挑戦したサガが力強く容器を握り過ぎてケチャップを暴発させるとは予想外である。

 やらかすだろうな、と予想して構えていたカノンと一輝が咄嗟に予備のテーブルクロスを広げて周囲を囲っていなければ昼食も食堂も惨劇の現場───のようになっていただろう。
有能な使用人たちが手早く片付けに取り掛かってくれたが、自爆したサガの着替えやら後始末はこの2人がつけてくれた。
席に戻った頃にはせっかくの昼食が冷え切ってしまっていた事も含めて、作ってくれた一輝に申し訳ないサガである。

 それでも、とても美味しかった。
多少、甘過ぎる感はあったけれど、初めて食べるのに懐かしさを覚える不思議な味わいと余韻が忘れられない。

「次は、是非とも温かいうちに食べたいものだ……」

 そう、思うくらいに。

「……というか、オレたちはマジで一輝に面倒かけ過ぎなんだよなあ……」

「それは本当に、心より、猛省している」

 少し己の所業を振り返って居た堪れなくなってきた双子を他所に、カニ(仮)らは次回のオムライスについて意見を戦わせていた。

「やっぱりよー、ケチャップじゃオレらには甘過ぎたな。次はちゃんとしたトマトソースで作るわ」

「私としてはデミグラスソースやベシャメルソースで、というのも試してみたいがな」

「オムカレーやオムそばというのも心惹かれる」

 食べながら、次はこんな組み合わせのオムライスが食べたい、と兄弟たちは一輝にリクエストしていた。

 ガーリックライスにチーズオムレツを乗せ、ビーフシチューをソースとして掛けたもの。
シーフードピラフにプレーンオムレツを乗せ、クリームベースのクラムチャウダーやトマトベースのミネストローネをソースにしたもの。
カレーピラフにチーズオムレツとカレーソース。
ソース焼きそばを薄焼き玉子で包んでウスターソースとマヨネーズをかけたもの。

 オムライスには無限のバリエーションがある。
聞いているだけで、居候たちも食欲と好奇心が刺激された。
昼食を食べている最中だったにも関わらず。

「最近、食べる事が楽しみになったな」

「ああ、そうだな」

「そりゃいい。食は人生を華やかに彩ってくれる」

 だが、運動もしろよ。
とカニ(仮)は忠告する。

「でなきゃ、リキシになっちまうぜ」

 サロンは笑いに沸き立った。



 
【続く】 
‡蛙姑。@iscreamman‡ 
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WRITE:2023/11/13〜2023/11/28
UP DATE:2023/12/11

 
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