You'll never walk alone
□青く深き王国
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青く深き王国
〜 Deep Blue 〜
6 王国の鍵 洞窟に数人の忍と商人を残し、霧隠れの忍たちは出て行った。
その姿を離れた岩場から確認しつつ、イルカは歯噛みする。
カカシヘの連絡は遅過ぎたかもしれない。
ヘタをすれば、襲撃に備えて策を練り始めた処へ敵が襲ってくる可能性がある。
イルカは思考を巡らせ、この場で取るべき行動を瞬時に選択した。
──手薄な拠点を潰して、動揺を誘うか……
敵忍の移動速度からこの場所の異変を察知できるぎりぎりの距離までの時間を計っていく。
チャクラをできる限り押さえ、洞窟に残る者の気配を探る。
残っているのは中忍レベルが3人、忍ではない者が1人。
特に警戒した様子もなく、取り留めのない話をしているのが聞こえた。
周囲に気を配りながら装備を確認し、イルカは自身の動きを組み立てていく。
──まず、大きな術がいるな……
基本忍術を中心に多くの術を習得しているとはいえ、後々を考えれば使えるチャクラ量は限られた。
ワイヤーとクナイ、そして起爆札を組み合わせれば、洞窟の一部を破壊できるだけの威力を持たせられる。
それだけの爆発ならば、村へ向かっている敵の一団がこちらの異変を察知して戻るか隊を分けるかするだろう。
その威力で3人の忍びをばらし、隙をついて商人を確保しておけば情報もとれる。
──後は複数の襲撃だと思わせつつ、時間を稼いで……
戦力を削るだけで、殲滅させる必要はない。
無傷で、敵が戻る前に撤退し、情報源となる捕虜を連れてカカシやナルトらと合流できれば上出来だ。
考えを組み立て、計り続けた時機が迫る。
──……よし!
迷いなく飛び出したイルカは、用意した仕掛を洞窟の入口へ投げた。
同時に印を組み、微妙に姿を変えた影分身を2体作り出す。
まず影分身に忍を撹乱させ、その間に自身は商人を確保する。
岩盤の隙間に突き立ったクナイに結ばれた起爆札が燃え尽きるのを横目に、イルカは洞窟へ飛び込んでいく。
対処に動き出した忍には構わず、何が起こっているのかも分からぬ商人をめざした。
豊かさがにじみ出た肉の厚い肩を掴んで引き倒し、背後からの爆風に備えて防御術の印を組みかけたイルカは、違和感に気付く。
「……どうした?」
そう問うて来るのはイルカが引き倒した男で、表情は見えないが声には明らかに嘲りがあった。
更に、燃え尽きたはずの起爆札が全く発破しない。
咄嗟に男からは離れるものの、状況はイルカにとって不利なものでしかなかった。
「……くっ!」
さっきまでと忍達の気配が全く違っている。
中忍レベルではなく上忍、つまり──。
「木ノ葉の中忍が我ら霧隠れの水神(ミナカミ)3姉妹を2度も欺こうとはの……」
変化を解いて現れたのは罔象(ミズハ)、闇霎(クラオ)、高霎(タカオ)のくのいち3姉妹だった。
「そなたが『うみの』の者じゃな?」
言葉と一緒につきつけられた直刀に怯むことなく、イルカは相手を見据える。
「だとしたら?」
「帰すわけにゆかぬ」
咽喉元に押し当てられた刃は紙一重のところで止まっているだけ。
否認すれば躊躇なく踏み込んでくるだろう。
write by kaeruco。
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