You'll never walk alone
□青く深き王国
33ページ/45ページ
青く深き王国
〜 Deep Blue 〜
8 深い青、
暗き海の中の根源 両手にクナイを構え、サスケは霧隠れのくのいち2人からの攻撃を受け流す。
写輪眼で相手の動きを把握し、洞窟の狭さと自身の体格を逆手にとって動いていた。
鋭い刃風が髪の一筋を切り裂くが、サスケ自身が傷を負うようなことはない。
だが、それは闇霎(クラオ)と高霎(タカオ)も同じだった。
決定打どころか、かすり傷さえ負わせることもできず、サスケも苛立っていく。
3人の動きは早く複雑で場所が狭く、投げたクナイや手裏剣の跳ね返りを考えると下手な援護は帰って味方を危険にさらすだろう。
そして如何に才能があろうが経験値も身体能力も明らかに上手の2人を相手にしているサスケは圧倒的に不利。
このままではいずれ押し切られるのは確実。
この状況を悪くする可能性があるとしても、仲間を見捨てることができないのがナルトだった。
けれど、全てを理解した上でサクラは必死にナルトを抑えながら、考えを巡らせている。
くのいち2人の動き。
洞窟の狭さ。
サスケとナルトと自分の動き。
瞬時に脳裏を駆け巡り、サクラは促すようにナルトを制していた腕を引いた。
「サスケェッ」
「サスケくんっ!」
ナルトはクナイを2本投げる。
サスケに向かって。
「足手まといがいると大変じゃな」
「まさか味方からクナイを投げられるとは」
嘲り笑いながら、闇霎(クラオ)と高霎(タカオ)はサスケへ迫る。
金属を弾く音が響き、2人の動きが止まった。
「……その言葉、そのまま返すぜ」
サスケはクナイも持たずに正対し、不敵な笑みを浮かべていた。
「で、どっちが足手まといなんだ?」
ナルトの投げたクナイはサクラが手裏剣で弾き、更にサスケが軌道を変え、2人の背に突き立っている。
「バカ、なっ」
「我らが下忍などにっ」
流石にクナイ1本では致命傷には至らず、互いを支えあいながら水瞬身の術で逃走していく。
サスケは追いすがろうとしたが、流石に間に合わない。
「待て。1人で追うな」
「くそっ」
パックンに窘められて留まったものの、サスケは歯噛みした。
2人が戻れば、自分たちが動いていることが知れてしまう。
けれど過ぎたことを悔やんでいる時間はない。
「きっと私たちが後を追ってるってバレてたから、あの2人がきたのよ」
宥めるように、立派な作戦参謀としての意見をサクラは言う。
「私たちが遅れるほど、相手に余裕を与えることになるわ」
「だったら、いっそいで追いかけるしかねえっ」
サクラに賛同し、サスケを鼓舞するようにナルトが威勢良く行き先を指し示す。
「遅れたら、ぜってー先生たちだけで片付けられちまうってばよー」
この非常に危うい自分たちの状況を完全に把握はしていないのだろうけれど。
仲間の顔を交互に見やり、サスケはほんの少しだけ不思議そうな表情をみせた。
「……ああ。行こうぜ」
だが、すぐに忍びとしての顔に戻ってサスケも行き先を睨む。
誰が号令を発するでもなく、3人と1匹は同時に走り出した。
狭く複雑な通路だが、まだ体の小さな子供の彼らにはさほど苦にならない。
水遁に長けた霧隠れの忍びの泣き所だ。
write by kaeruco。
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]