You'll never walk alone
□青く深き王国
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青く深き王国
〜 Deep Blue 〜
10 愛する大地「何故だっ!?」
驚愕し、罵声と悲鳴の入り混じった叫びをあげながら、アウムは赤黒く染まった碑石と共に襲いかかる水流に押し流されていく。
彼に向かって行こうとしていた高霎(タカオ)と闇霎(クラオ)もまた、水流に巻き込まれて姿を消した。
霧隠れの忍たちを攫った水流はナルトたちにも向かって来たが、カカシとサスケの写輪眼で水流の動きを見極めてチームワークでかわしていく。
それでも水流は執拗に襲いかかった。
水流はアウムの命じたように攻撃してきている。
けれど、意図したままでない事は、一番最初に彼が巻き込まれた事で明白だ。
では何故。
「……暴走?」
サクラは厚く雲に覆われた暗い空を見上げて呟く。
封印が解ける目安となる月は、まだ満ちていない。
それを知っていたはずのアウムは、鍵となる血を得て悦に入って先走った。
それで暴走したのかもしれない。
いや、最初から人の意のままにできるものだったのかも分からない。
サクラが見上げる先で《力》は高空へと駆け上り、獲物の様子を窺う猛禽のように大きく弧を描く。
このままでは、60年前に礁の国を滅ぼした悲劇を繰り返す事になってしまう。
「どうしたら……、そうだ、確か」
サクラは自分の記憶に残る、白い社の前に据えられていた丸く黒い石に刻まれた紋様を思い返していた。
碑文の大半は《力》の計り知れない万能さと危険さを伝える言葉ばかり。
万が一として、《力》が目覚める条件と鎮める方法も記されていた。
──祖王、連なる、血
古い言葉なのか、名詞や動詞の羅列でしかない。
助詞を足せば読めるけれど、選択を間違えれば正解にはたどり着けなくなる。
サクラは慎重に言葉を組み立てていく。
──大地、汚れ、目覚める
「王に連なる血が、大地を汚した目覚める? じゃあ、あんなやり方じゃ……」
きっとあの《力》は、王が傷つくような危機への最後の対抗手段だったのだ。
──怒り、巫女、祈り、鎮める
「怒りは巫女の祈りで鎮められる、のね」
巫女はマナの事だろうが、どのように祈れば良いのか。
サクラだって自分が間違いなく解読できているとは思ってはいない。
だがアウムが読み違えたか都合良く解釈した結果から、可能性を絞り込める。
あの男の言動をも記憶から掘り起こし、手掛かりとしていた。
──再び、眠り……王、刃
「……刃?」
マナやカフ、フナが話してくれた礁の国の記憶を総て浚い、たどり着いたのは最初の話。
60年前、礁の国が滅亡した時の話。
若者と巫女が一振りの剣を手に、荒れ狂う《力》に立ち向かった、と。
そして、碑文は続く。
サクラが解釈するに──。
──巫女よ、刃を持って古と、青く深き海を尊ぶべし
王よ、人と大地に心を砕け──
「巫女と、王だけが、あの《力》を鎮められる……」
つまり、内輪湖へ落ちて安否の分からないイルカとマナが居なければ、どうにもならない。
「お前らは村に下りて、島の人たちと高台に避難してな。イルカ先生たちは、オレが探す!」
カカシはそう指示を出すが、ナルトは聞かない。
「オレも、オレも探すってばっ!」
暗い海の中の根源と言われる《力》のことは、こうして目の当たりにしている今でもナルトには良く分からない。
write by kaeruco。
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