You'll never walk alone

□青く深き王国
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青く深き王国
〜 Deep Blue 〜
 
幕 明日へ



 島中に降り注いだ内輪湖の水は海水だった。
 その塩害で盛況だった山腹の木々には立ち枯れが目につくようになってきている。
 沿岸に近いささやかな畑もしばらくは収穫がないだろう。

 それでも、すっかり住み慣れた土地を失うよりはましだ、と島の人々は慰めではなく言ってくれた。

 畏れていた《力》の解放は未然には防げぐことはなかった。
 けれど野心ある誰かに良いように使われることもなく、暴走もなんとか治めることができた。
 封印と解放に関わる碑石は湖底深くに沈み、鍵となる者も島を離れる。
 もう二度と、このようなことは起こらないだろう。

 任務を終えた木ノ葉隠れの忍たちは、里へ戻る船に乗り込んでいく。
 カカシ、サクラ、サスケ、ナルト。
 それから、イルカ。

 桟橋にはフナや子供たちが見送りに来てくれ、暗礁を避ける為の先導船にはカフが乗り込んでいた。
 
「皆さん、本当にありがとう」

 島を代表してマナが改めて礼を告げ、イルカと別れを交わす。

「本当にありがとう、イルカさん」

「こちらこそ、お世話になりました」

「行ってらっしゃい」

 マナとしては、イルカは島に帰ってき、これからまた里へ旅立つ人という気持ちだった。

「いつか、帰ってきてとは言いません。だけど、またこうして私たちの子供か孫が出逢えると信じていてもいいですよね?」

「ええ、勿論」

 しっかりと頷いて同意を示すイルカに、その時は、とマナは微笑む。

「その時はまた、突然やって来て許婚だと宣言して周りの皆さんを慌てさせそうです」

 どちらの子孫もきっとそうするんだろう、と考えて悪戯な笑みを浮かべるマナとイルカは、やはり良く似ていた。
 
 
【了】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2012/07/20
UP DATE:2012/07/22(mobile)
 
 
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