You'll never walk alone

□青く深き王国
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 それに比例して海の透明度も上がり、青さが鮮やかに輝きだす。

 そんな景色に子供たちはうきうきとし始めていた。

 ナルトは舳先に、サスケは船尾で舵を取るイルカの側に陣取り、気持ちよさそうに潮風を浴びている。
 船室では、マナがサクラへ薄桃色の布を被せていた。

「ほら、サクラさん、そんなに肌を出してると焦げてしまうわ」

「こ、焦げ……るんですかぁ」

「ええ、特にあなたみたいに色白だとね」

 真っ赤に腫れ上がってかさぶたになったり、シミになったりするの。

 などと言われれば、忍びとはいえ女の子だ。
 サクラはマナに言われるまま、頭から大きな布を被る。

「良く似合うわ」

 嬉しそうに誉められ、サクラも自分の姿を確認するようにくるりと回ってみせる。

「ふふ。サスケくんたちに見せてきたら?」

「はいっ!」

 暗く狭い出入り口を抜け、サクラは甲板へ飛び出していった。
 続いてマナも甲板へ出る。

 それほど長く離れていたわけではないのに、眩しい日の光も潮の匂いも、懐かしく感じた。

 船尾ではサスケとイルカの前でサクラがまたくるりと回ってみせている。
 ふわりと風をはらんで翻る薄桃色の布は、青い海によく映えた。

 その様子にも気付かず、舳先でじっと行く先を見つめているナルトの傍らへマナは歩み寄った。

「ナルトくん」

「マナ姉ちゃん……」

 どことなく、ナルトにいつもの元気のよさがない。
 別に船酔いをしている様子はないのだが、旅が進み、礁の国へ近付くほどに思い悩んでいるように見えた。

「何か、心配ごと?」

「あのさ、マナ姉ちゃんは、イルカ先生を……迎えに来たんだろ? だったら、だったらよぉ」

 もしかして、イルカ先生。

 そこまで言ってナルトは黙ってしまった。
 だが、何を言わんとしているのかマナには分かる。

「ナルトくんは、イルカさんのこと、本当に大好きなのね」

「イルカ先生はさぁ、オレのこと、一番最初に、認めてくれた人なんだってばよ……」

「そうなの。だからなのね」

 ナルトの語る言葉の真摯さにマナは微笑み、そっとナルトの肩を抱き寄せる。

「大丈夫よ。イルカさんは……ううん。イルカ先生は、この任務が終わった時にも、一緒に木ノ葉の里に戻るわ」

「……なんで、分かるってば?」
 
「人は、生まれて育った場所で、大事な人や大好きな人と暮らすのが一番安心するでしょう?」

 旅に出てもね、きちんと帰る場所があるから、知らない景色を楽しんだりできるのよ。

 と諭すマナには実際に国を亡くした者の悲しみがあり、そして久しぶりの故郷を懐かしむ気持ちがあった。

「だからきっと、イルカ先生もね、木ノ葉隠れの里やナルトくんたちと、離れたくないんじゃないかしら?」

「マナ姉ちゃん……そ、そうだよなっ! うん! きっと、そうそう」

 ようやく元の笑顔を取り戻したナルトとマナの元へ、サクラとサスケも駆け寄ってくる。

「マナさんっ! イルカ先生がどの辺りへ船を着けたらいいかって」

 サクラの示す先、波間の向こうに白く岩陰が見え出していた。
 
 
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2005/09/09
UP DATE:2005/09/17(PC)
   2008/12/30(mobile)

 
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