You'll never walk alone
□青く深き王国
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イルカの問いかけに、しばし考え込んだフナが足元の砂に書き付けたものは、霧隠れのマークに似ていた。
「……コレ、見たことあるってばよ」
イルカに至っては当然だが、経験は浅いナルトたちでも、この印はよく知っている。
忘れようにも忘れらない、最初の辛い任務で見たものだ。
「そいつらがな、ここへ来て、碑文を写して行きおったらしい……」
フナの視線は文様の刻まれた丸い石に向けられている。
「碑文? これが、文字なんですか」
イルカの言葉に、サクラは立ち上がって岩に刻まれた文様を指で辿ってみた。
しかし、これまで蓄えた知識にある古代文字のどれとも似ていない。
「……こんなの、見たことない……」
文字である以上、時間をかければ法則性を見出して読むこともできるかもしれない。
けれど、時間を費やす余裕はなさそうだ。
「何が書かれているか、分かりますか?」
「いや。この言葉は60年前に失われました。読み方を知っていたのが、うみのの方でしたし」
「私たちは、まだそちらの方がご存知ではないかと思っていたのです」
だが木ノ葉隠れへ渡ったうみのの者は十数年前に失われ、残っているイルカは礁の国のことは何も知らなかった。
もちろん文献や書付など遺されてはいない。
「……木ノ葉隠れでも10数年前に似たようなことがありまして……。その時に私以外は……」
そのことを告げるイルカの背後で、ナルトが顔をそむけた理由はサスケにもサクラにも思い当たることはない。
ただ、ナルトもあの時に家族を失ったのだろうと、推測するぐらいだ。
「1つだけ、ワシらに伝えられていることがあります」
そう言ってフナが口にしたのは、1節の詩。
1つ区切りの満月に獣は再び解き放たれる
その時、我らは再びこの地に帰ろう
誓いと血により、青き王国を取り戻さん 何を意味するのか、掴みにくい言葉だ。
今度こそ《力》を御して元の栄光を取り戻すのか、それとも完全な破滅へと導くのか。
1区切りというのが、島では60年を示すのだとフナは言う。
「そしてワシらはまた、うみのと水門(みなと)の方が救ってくださると、ずっと信じておりました」
フナを迎えに来たカフと共に、暗い中、慣れない山道を降りた。
険しいところはカフがフナを、イルカがマナを背負っていく。
そのまま、ナルトたちは彼らの家へやっかいになることになった。
木組みに大きな葉を編みこんだだけという簡素な造りだったが、フナの家は集落の中でも特に広い。
3つの棟に分かれていて1つにカフとフナの親子が暮らし、もう1つにマナが住んでいる。
サクラだけはマナのところで寝起きし、普段は子供たちの学校のように使われている棟をイルカとナルト、サスケが使うこととなった。
夕食に並んだ食材はどれも見たことの無い形と味をしている。
流石に、魚を果物で煮たものはサクラやサスケの口には合わなかった。
だが、その他はまずまずの味だ。
皆、昼の間に集落の人々が島へ戻ってきたうみのの家の者へと届けてくれた物だという。
イルカは複雑な表情になったが、誰も何も言わなかった。
その後、早々に床につくカフやフナを他所に、木ノ葉の忍び達は明日からの事を話し合う。
「……あの詩が何を意味し、何が起こるのかは分からない。だが、満月まではあと3日だ」
write by kaeruco。
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