You'll never walk alone

□青く深き王国
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 昨日のフナから聞いた話では、集落には大勢の人がいるはずだ。
 元々の島民に加えて、大陸から取引の為に渡ってきた者も。


 だが、目の前の集落には極端に人の気配も生活感も感じられない。
 しばらく誰も暮らしていない状態だ。

 これでは誰かに変化して集落の中を探ることは難しいだろう。

「ナルト、様子がおかしい。戻るぞ」

「えーっ! なんもしてねえじゃんかよー」

「まだ、なんもしてねえから撤退できるんだ。バカモノ」

 ホレ、行くぞ。

 返し掛けたイルカの足が、止まった。

 ぶつぶつ言いながらも、続こうとするナルトの肩を掴む。
 そして、強く、押し出した。

「村へ戻れっ!」

 そう叫ぶイルカを返り見ようとして、ナルトも異変に気付いた。

 2人のいた場所に転がった丸太にクナイが突き立っている。
 数と方向から、イルカとナルトだけで対処できる人数ではない。

 イルカはナルトを突き飛ばして自分は替わり身で凌いだ後、1人で立ち向かっている。

「オレもっ!」

「戻って仲間に伝えろっ! 次の命令まで、待機だっ!」
 
 それが自分を逃がす間を作るためだとは思いも寄らないナルトから、戦いながらイルカは離れていく。
 分断されるふりをしながら、敵をひきつけて。

 こうした時、まず狙われるのは隊の上位者だ。
 討ち取れば指揮系統を混乱させられるし、捕縛すれば情報が得られる。

 下忍で子供のナルトより、中忍以上と一目でわかるイルカに敵が集まるのは当然だった。

 ナルトも追い縋ろうとするが、まったく無視されているわけではない。
 戦いながら2人は徐々に引き離され、完全に分断される。

 それでも集落からの脱出はでき、ナルトは追撃はされなかった。
 逃げ帰っても害は無いと見逃されたか。

 だがその分、イルカには追っ手が増えていく。

 追い詰められ、岬へ追い詰められてしまった。

 イルカもただ追われていたわけでなく、数人に手傷を負わせはした。
 けれど、やはり数が違いすぎる。

 ようやくナルトがその姿を崖下から見つけた時、巨大な水の龍にイルカは海中へ引きずり込まれた。

「イルカ先生ーーっ!!!」
 
 
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2005/10/03
UP DATE:2005/10/12(PC)
   2009/01/01(mobile)
 
 
青く深き王国

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