You'll never walk alone
□青く深き王国
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その声とともにイルカの姿はドロンと白煙に包まれ、一瞬後にはナルトらの担当上官であるはたけカカシが姿を現した。
「よ」
普段のごとく、まったく緊張感も見せずに片手を上げてみせるが、カカシの怪しげな風体にますます子供たちは遠巻きになっていく。
カカシと、呆然と担当上忍を指差したままフリーズしたナルトの両方に呆れ、サスケは疑問とため息を吐き出した。
「どういうことだ?」
「綱手様が言ってたデショ? 援軍出すって」
今朝こっち入って、さっきお前とイルカ先生が分断された時に入れ替わったの。
「イルカ先生は引き続き、偵察してもらってる」
そう言ってまだ呆けているナルトの頭をぽんぽんと叩き、カカシは部下たちへ微笑んでみせる。
「ダイジョーブ。お前ら、もちっとイルカ先生信頼してあげな」
請け負うように言われてしまえばサスケもナルトも黙るしかない。
部下がおとなしくなったのを見計らって、カカシは遠巻きに自分を見ている子供たちへ目を向けた。
中心で、1人の女が困ったような視線を彷徨わせている。
「私は木ノ葉隠れの上忍、はたけカカシです。こいつらの担当教官で、今回は助っ人として参加しますんで、よろしく」
胡散臭い程愛想のいいカカシの言葉に、信じていいものか戸惑っているのだろう。
マナはナルトやサスケへ視線を向けた。
「心配すんなって、マナ姉ちゃん」
いつもの元気を取り戻したナルトがどこか嬉しそうに鼻の下を指先でする。
「カカシ先生ってば、怪しげで頼りなく見えっけど、ほんとはすっげー強いんだってばよっ!」
「実力だけは確かだ」
ナルトと短く同意するサスケの言葉に、マナは大きく頷いてお願いしますとだけ告げた。
お任せくださいと返すものの、部下達のフォローは素直に喜べるものでなかったカカシの表情は引きつって見える。
「さて、大体の状況は聞いてんだーけど……。サクラは?」
「フナって人が後から登っていた。向こうで落ち合ってるハズだ」
サスケが視線で示したのは、山の頂き。
カカシも頷き返すと、部下から人に告げた。
「そ。じゃ、まずはサクラと合流しないとね」
その頃、イルカは集落を見下ろせる岬の中腹にいた。
集落や海からは見えないが、そこには洞穴があり、その奥は島の中央へ続いている。
洞穴は霧隠れの忍者たちの巣窟となっていた。
中忍レベルの者が10数人、そして上忍レベルの者が3人、その他に商人らしき壮年の男が1人、潜んでいる。
──数が多いな……
ナルトと意図的にはぐれた後、合流したカカシと簡単に情報の交換をして偵察に残ったイルカだが、まずいと思いだしていた。
あの接触でこちらの戦力が数的にも経験的にも劣っていることが分かっただろう。
──陽動をかけられたら、守りきれない……
ナルトとサスケは戦闘力は下忍のレベルを越えているが、いかんせん経験値が足りず、また直情的なところがある。
サクラも彼らよりは冷静でまず考えるということができるのだが、やはり経験がなさすぎる。
今回の任務は、彼らにその経験を積ませることも目的の1つ。
だが、何よりもまず生き残れなければ貴重な経験と反省を次に活かすことも出来ないのだ。
多分、彼らにはまだそれがわかっていない。
write by kaeruco。
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