You'll never walk alone

□青く深き王国
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「仕方ないな……」

 イルカは両手を上げ、抵抗する意思のないことを示す。

 霧隠れの罔象(ミズハ)が改めて訊ねた。

「そなた、名は?」

「木ノ葉隠れの、うみのイルカ。うみの家の生き残りだ」

 素直に答える。
 万が一の時は、この事実だけが命綱になる。

 そう見越して、カカシからこの役目を請け負った。

 予想通り、くのいちたちは従順な態度に満足げに微笑んで頷く。
 背後で立ち上がった男に向かって、だ。

「いや、あなたが飛び込んできた時は驚きましたよ。あの男かと思ったぐらいでした」

 弁の立つ男は奇妙なほどはっきりとした声を出す。

 促されて振り返えったイルカは初めてまともに男の顔を見た。

 肌の色や顔つきを見る限り、この島の出身者のように思える。
 でっぷりとした身体つきのせいか、確かな年齢は分かりにくい。
 元は黒かったろう薄い頭髪が灰色がかっているのから、多分40代後半ぐらいだとしか。

「ようこそ、お戻りくださいました。祖王ウミに連なる方。歓迎致しましょう」

 深き海へ沈んだ王国への鍵、として。


 


 
 ナルトとサスケはカカシを案内し、頂きへと続く崖を登っていった。
 チャクラを足に集めての跳躍と吸着を繰り返し、あっという間に駆け上がっていく。

 頂きを見渡すと、神殿の前でサクラが跪いているのが見える。
 サスケが登っていくのを見たフナは途中で追い越してしまったのか、姿はない。

「サクラちゃーん」

 すっかりチャクラ吸着での崖のぼりを体得してしまったナルトは疲れた様子も見せずにサクラの元へ駆け寄っていく。

 サスケはそんなナルトの背を睨むような強い目で見ていた。
 総合的には最もバランスのいいサスケだが、スタミナやチャクラ量ではナルトに敵わず、知識やチャクラコントロールではサクラに劣る。

 それが高みを目指す少年の劣等感を刺激して、面白くないのだろう。
 だが、その気持ちをうまく導いてやればきっといい忍びになれる。

 そう考えるカカシは、黙って彼らを見ていた。

 ナルトの声に顔を上げたサクラは、その後に続くサスケといるはずのないカカシの姿を見つけて表情を変える。
 最初は煩げに、次に嬉しげに、最後に不思議そうに。
 
「先生、どうして」

「や。助っ人だーよ」

 親しげに片手を上げて微笑むカカシだったが、どうにも胡散臭げだ。

 とっくにその人となりを知っているというか、割り切って付き合っている部下たちは突っ込もうともしない。

「で? どうなの?」

「昨日までに聞いた話とか参考に、色々言葉を当てはめてみたんですがまだこれだけしか……」

 差し出した紙にカカシは目を細める。

 そこには今朝からの彼女の奮闘振りが如実に表れていた。
 同じ文字の数から文章の形を探り出し、そこへいくつかの単語を当てはめていって、意味の合うようにしている。

「なるほどねえ……」

 興味深げにサクラ渾身の解読表を眺めていたカカシが、ふいに顔を上げた。

 登ってきた側とは別の崖から、1匹の犬が駆けてくる。
 3人にも見覚えのある、カカシの忍犬だ。

「ご苦労さん」

 駆け寄ってきっちりとお坐りする犬を撫で、カカシは額当てへ忍ばされていた伝書を抜いて目を通す。

「それ、イルカ先生からだろっ!」

 真っ先にナルトが知りたがり、サクラとサスケも興味を向けるように表情を変えた。
 
 
write by kaeruco。
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