You'll never walk alone

□青く深き王国
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 所々に残る不自然な水溜りが道しるべとなってくれる。
 もはや、迷うことはなく、一気に駆け抜けた。

 長く暗い自然の洞穴は時に水が、風が蝕み、育んできた道。
 それはやがて、ぽかりと断崖に口をあける。

「ここは?……」

 足元には深い青を湛えた水が広がり、風は塩の香りを孕んでいる。
 周囲の岩盤は白く、夜明け間近の光をまとって輝きだしていた。

「島の頂きかっ!?」

 すぐに見当のついたサスケが場所を言い当て、頭上を仰ぎ見たナルトは不思議そうに上を示す。

「あれ、フナの爺ちゃんと最初にあった場所だってば?」

 確かに断崖から頂きの湖に張り出すように建てられた白石の社だ。

 何故か、床の中心に丸く穴が開いていた。


 



「で、どうするってばよ?」

「カカシはまだみてえだな」

「道は3つね」

 気が急くばかりであまり建設的な意見のでてこない2人を見限っているのか、サクラは自身の案を示す。

「このままカカシ先生と合流できるのを待つ」

「そんなん待ってらんねーってばよ」

 第1案は3人一致で却下。
 遅刻癖の酷い担当上忍を待つのは低レベル任務だけで充分だ。

「あのお社を調査」

「そんな猶予はない」

 第2案も2人は即答。
 若干1名が残念そうに破棄。

 そうなれば、取るべき道は1つだけ。

「じゃ、さっさとあのくのいち追いかけて、マナさん助けましょ」

 見上げる断崖には真っ直ぐに上へとくのいちたちが駆け上がった痕跡があった。

 馬鹿正直に追撃するのはここまで。
 途切れ途切れの細い道を辿り、社から離れた薮へと3人は駆けた。

 サクラとサスケ、ナルトはそれぞれの潜んだ場所から開けた社の前を見やる。

 そこにイルカとマナがいた。

 無事なようだが、身動きがとれないように拘束され、更に2人一緒に繋がれているらしい。

「イルカ先生ってば、何やってんだってばよっ」

 おとなしく捕まってるなんて、ぜってーらしくねえってば。

「馬鹿ナルトッ! あのままイルカ先生がなにかしたら、マナさんが怪我するでしょ」

「あ、そうか」

 サクラの指摘というか説明に、ナルトは古典的に手を打った。

「じゃあっ。どーすんだってばよっ」

「少し黙れ、ウスラトンカチ」
 
 背を向けて敵方を窺いながらサスケが制すると、ナルトはいつものように食って掛かろうとしてサクラに睨まれた。

 言いあいをしている場合ではない。

 薮の向こうには、社の前に置かれた黒い石を挟んで4人の人影がある。
 1人は商人で、他ははくのいちだ。

 幸い、他の忍びの姿はない。

 闇霎(クラオ)と高霎(タカオ)を前に、厳しい顔つきをした女の背には抜き身の長い刀剣が鈍く光る。

 かつて戦った霧隠れの鬼人を彷彿とさせるその女の佇まいに、気が引き締まる。

 もう2度と、あんな思いはしたくなかった。

 背後に気配を感じ、サスケが、ナルトとサクラがそちらへ向き直る。
 敵かとクナイを構えて見上げると、のほほんと右手を振っている上官。

「よ。早かったねー」

 パックンもご苦労様。

 全くじゃと横柄に頷く忍犬を労ってやり、口寄せを解く。

「てめえ、どこ行ってやがった」

「ん? 忘れ物取りに」

 示したのは、よりにもよって常に携帯している愛読書だった。

──そんなもの忘れてくんじゃないわよっ
 しゃーんなろーっ
 
 
write by kaeruco。
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