You'll never walk alone
□青く深き王国
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その速さは肉体活性による突撃と遜色なく、くのいちは再び背後にうねる刃を隠してカカシの周囲を巡った。
時々、不意をついて浅く傷を刻み、木ノ葉隠れの高名な業師をいたぶっていく。
そんな師の様子を目の端に見せつけられながら、ナルトらもまた霧隠れのくのいち2人に追い詰められつつあった。
カカシに任されて3人で対峙したものの、突っ走るナルトやサスケと慎重派なサクラとでは肝心のチームワークが噛み合わず、動きの一々がもたつく。
「どうした、木ノ葉の忍ども」
「洞窟での威勢はどうした?」
逆に高霎(タカオ)と闇霎(クラオ)は2人であってもまるで1人であるかのようなタイミングで、刀術と水遁を織り交ぜた連携攻撃をしかけてきた。
それが彼女たち双子ならではの呼吸なのか、長年の訓練で培ったものかは分からないが、3人にとっては脅威である。
サスケやナルトと背を預けあい、剣舞でも舞うように回転しながら入れ替わって攻撃してくる2人のくのいちの動きをサクラは必死で観察した。
回転の遠心力で刃の鋭さを増しているだけでなく、ギリギリで刃を交わしたつもりでいると思いも寄らぬ方向から蹴りや暗器が襲いかかってくる。
そんな攻撃を3人が辛うじて交わしていられるのはサスケの目、写輪眼のおかげだ。
しかし全ての方向をカバーできるわけではなく、サスケの警告に反応したと同時に攻撃を受けていることもある。
少しずつではあるが、3人は文字通り削られていた。
このままではいけない。
なんとか打破しなければ。
サクラは必死に探し出そうとしていた。
たった2人に囲まれ、言いようにいたぶられているこの状況の打開策を。
「サスケくん、ナルト、聞いて」
とびきりの妙案ではないが、とっさに閃いた思いつきにサクラは賭けた。
小声で2人に役割を振り、自らをも策に組み込む。
《多重影分身の術》
3人を覆い隠す煙の中から、いつものように大量発生したナルトが闇霎(クラオ)と高霎(タカオ)の刃を食い止め、その隙にサスケとサクラは身を翻して崖っぷちへと走り出した。
「逃がすものかっ!!」
高霎(タカオ)が間近の影分身を一薙ぎで数体消し去ると、クラオが印を組み逃げる2人の背後から襲いかかった。
《水遁・水流鞭》
水流の鞭が唸り、サスケとサクラの背を強かに打つ。
途端に煙があがり、2人の姿が掻き消えた。
「なんだとっ!?」
「分身なのかっ!?」
周囲を見渡しても、ナルトばかりが数十人いるだけ。
タカオが苛立ち紛れに刀を振るうも、影分身も黙って撫で斬りにされるはずもなく一斉に手裏剣やクナイを放った。
無数に襲い来る刃に、くのいち2人は両手に握った刀と回転蹴りで辺り一帯を一気に薙払おうと踏み出す、が。
「ぎぃあぁーっ!?」
「あ、足がっ!! 足がぁっ!」
2人の軸足にワイヤーが巻きつき、自身の回転の勢いで半ば断裂されていた。
同時にナルトの影分身は一斉に消え失せ、紛れて変化していたサスケとサクラも姿を表す。
回転しての攻撃は確かに脅威だったが、日向ネジの回天と違って軸足などは無防備に見えた。
それに気付いたサクラの考えで、ナルトの影分身と大量の手裏剣やクナイを目くらましにし、サスケが写輪眼で動きを見切ってワイヤーを巻きつけたのだ。
「……おのれっ」
痛みと悔しさに美しい顔を歪めて睨みつけてきる2人の腕をサスケとナルトが拘束し、足の傷はサクラが応急処置をした。
彼らにはまだ、敵とはいえ人に留めを刺す覚悟はない。
同じ頃、カカシと罔象(ミズハ)の戦いも終焉を迎えようとしていた。
write by kaeruco。
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