You'll never walk alone
□青く深き王国
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水雲を両足に履いて自在に空中を駆ける罔象(ミズハ)が振るう不規則な太刀筋は大きなダメージではないものの、カカシに多くの傷を負わせている。
名高い写輪眼のカカシを追い込んでいる愉悦にミズハは真っ直ぐに突っ込み、勝負を決する一撃を加えた。
その瞬間、両断したカカシの肉体が水柱となって砕け散る。
「水分身だとっ!?」
気付いた罔象(ミズハ)が周囲に視線を巡らせて、姿を消したカカシを探そうとした。
けれど、既に終わっている。
《雷切》
コピーした水雲の術を履いたカカシの雷をまとった右腕が、罔象(ミズハ)の背後から胸の中央を貫いて。
断末魔の叫びもなく、霧の水神3姉妹罔象(ミズハ)の命は。
事切れたくのいちから抜いた腕を一振りして血を払い落としたカカシは、一部始終を見ていただけの男──アウムへと足を向ける。
「これで、お前1人」
ここへ来る前にカカシは騒がしい下忍たちの追跡を隠れ蓑に、忍犬たちを使って潜んでいた霧隠れの忍を全て始末し、後顧の憂いを断っていた。
「さて、どうする? 船も沈めさせて貰ったし、逃げ場はないよ?」
「構うものか」
だがアウムは憤るどころか逆に、煩わしい荷を下ろしたかのように晴れ晴れと言ってのける。
「霧隠れの忍など、私がこの《力》を得る為の道具に過ぎない」
その言葉に忍として生きるカカシは不快感もあらわに眉をしかめ、サスケも苦々しく表情を歪めた。
サクラは悲しみをこらえて歯噛みし、ナルトは悔しさを隠すことなく強く拳を握り締める。
そして、拘束されたままの霧隠れのくのいち姉妹、高霎(タカオ)と闇霎(クラオ)は悲痛な声で吠えた。
「貴様っ、里に拾われた身でっ!」
「我らを、里を利用したのかっ!?」
周囲に散らばるクナイの刃に身を擦り付けて縄を切り、姉妹と互いに支え合って立ち上がると足を引きずる不格好な姿でアウムへ向かって行く。
「駄目、動いたらっ」
サクラの制止など耳に入るはずもなく、姉の屍をも越えて刃向かってくる2人。
アウムはただ冷笑を浴びせる。
「お前たち忍は国の武器でしかない! つまり、お前たちは道具! それが忍だ!!」
アウムは天にかざしていた腕を赤く染まった球状の石に押し当て、古い言葉を唄うように唱えた。
「《深い青、暗い海の中の根源よ》」
旋律に合わせ、石が脈動している。
「《太陽の足を切り、我らに大地を……》」
その言葉が終わらぬうちに、天を貫くまでに立ち上がっていた水柱が長大な身をくねらせて襲いかかってくる。
まず、自らの封印を解いた者を目掛けて。
それはかつて礁の国が滅びた夜が、まるで繰り返されているかのように。
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2006/04/28〜2012/06/27
UP DATE:2012/07/14(mobile)