You'll never walk alone

□青く深き王国
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 荷車の少し前方、道の端で真っ白な布を被った人物をナルトが助け起こそうとしている。

「ダメよ、ナルト! 動かさないで!」

 サクラが叫んだのは2つの危険が頭にあったからだ。

 行き倒れを装って隙を作り、荷物を狙ってくるのは野盗や山賊の常套手段。

 それに堂々と木ノ葉隠れの額当てをした下忍の運んでいる荷物だ。

 ただの野盗に扮した敵対する里の忍びの可能性だってある。

 もしくは本当に行き倒れだった場合、ヘタに揺り動かすと命に関わることもあるのだ。

「ああ、サクラちゃん。この人、ちょっと前歩いてたんだけどよ、なんかふらふらしてっから危ねえなって思ってたら倒れちまって……」

「いいから、もう一度寝かせて。アンタは荷車見てなさい」

 一応サスケが荷車についているが、あの疲労度ではいざという時が大変だ。

 ナルトにも警戒をさせておかねばならない。

 きちんと、別任務で不在の担当上忍師の穴をしっかりと埋め、サクラは介抱に掛かる。

「……大丈夫、気を失っているだけだわ。ナルト、お水ある?」

「あ? ああ、これ」
 
 倒れた人物の顔を覆っていた布をよけ、その口元にナルトから受け取った水筒からゆっくりと水を落とす。

 こくりと喉が鳴るのを確認し、サクラは一安心とばかりに息を吐いた。

「少し熱っぽいわね。熱中症かしら」

「この姉ちゃん、変な格好してんなあ」

 ナルトの言う通り、白と生成りの布を何枚も身体に巻きつけたり被ったりしている。

 髪は夜の闇のような黒で、波打つように緩くウェーブがかり、長く伸ばしていた。

 肌もこの辺りに暮らす人々よりも日に焼けていて、褐色といえる色をしている。

 細く、寝かされているとなだらかな曲線を描く体は確かめなくとも女性だからだろう。

「見たことない着物ね。ずっと南の人みたい」

 そう言いつつ、サクラは自分の膝にその人の頭を上げ、額へ濡らした手ぬぐいを当てた。

「ふぅん。でも、なーんかどっかで会ったよーな気がすんだよなーあ」

 ナルトの言葉にサクラもその人を覗き込んだ。

「気がついたわ」

 ゆっくり瞳が開くと、吸い込まれそうな深い青が揺らいでいる。

「大丈夫ですか? ああ、まだ起きないで」
 
 サクラに制され、ぼんやりと視線だけで周囲をうかがっていた人の眼がナルトの額で止まった。

「あなたたちは……木ノ葉隠れの方ですか?」

「ええ、そうです。あなたは?」

 額当ての意匠で里を判別したことで、少しサクラの警戒心が蘇る。

 木ノ葉隠れの里は各国にある隠れ里の中では有名だが、明らかにこの近隣の出ではない人物が知るほどではないはずだ。
 それに、何も知らない一般人が額当てを一目見て里を識別することは難しい。

「……わたし、木ノ葉隠れの里へ、行かなくっちゃ……あの、里はまだ遠いんでしょうか……」

「里ならもうすぐだってばよ! 姉ちゃん、具合悪ぃんだろ? オレたちと一緒に行けばいいってばよ!」

 なあ、サクラちゃん。

 と続けるものの、ナルトはとっくに手を差し伸べようとしている。

「ちょっと、ナルトっ! 任務中なのよ!」

 ありきたりな理由を持ち出して押し留めようとするサクラに構わず、まだふらつく人を1人で運ぶのは無理と判断したかナルトはもう1人の仲間を呼んだ。

「サスケー! 手ぇ貸してくれってばよーっ!」
 
 
write by kaeruco。
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