You'll never walk alone

□青く深き王国
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 ただ、ナルトにしか理解できないこともあった。

 得体の知れない強大な力を、その身に宿していると知らされる衝撃。
 忌まわしい秘密さえ受け入れ、自分自身を認めてくれる人のいる喜び。

 九尾の封印がある腹の辺りを強く握り、ナルトが思い出しているのは、忍となったあの日に自分に額当てを託してくれたイルカだ。

「……分かったよ、ナルト」

 カカシも2人の絆を知っているから、止めることもできない。
 軽く、懐かしい色の頭を撫で、釘だけは刺して。

「ただし、暴走してるアレを避けながらの捜索は危険だ。お前の面倒見ながら、なんて余裕はオレにもない」

 そこでだ、とテンポ良く呟くて、ナルトの頭に載せた手からボフンと煙が上がる。

「よろしくねー、パックン」

 小僧のお守りか、と愚痴る忍犬に先導され、ナルトは躊躇なく荒れ狂う内輪湖へ飛び込んで行った。

「サスケ、サクラは島の人達を頼む。いざとなったら、船で脱出するから」

「わ、分かりましたっ」

 無言で頷いたサスケを追って、サクラも一気に崖を下って集落を目指す。
 2人を見送ってから、カカシも内輪湖へて身を躍らせた。
 
 すり鉢状になった内輪山の湖面は、暴風の吹き荒れる嵐の海になっていた。
 至る所で波が砕け、幾筋もの水竜巻が立ち上がっては巨大な本流といえる水柱に飲み込まれていく。

 峰の上から崖の半ばを走るナルトとパックンの姿を確認し、カカシは改めて状況の全体を眺めていた。

「なんて力だ……」

 九尾のように禍々しく攻撃的なものではないが、巨大さ強大さはこちらが上を行くから巻き込まれれば結果は同じ。

 島の、礁の国の人々が《力》──深き青、暗い海の中の根源──と呼ぶこの力は、自然に存在する原初の生命エネルギーそのものだった。
 忍者が自らの体内で練り上げるチャクラに似ているが、仙人が使う仙術の源の一つと言うべきか。
 海中の自然エネルギーがなにかのきっかけで凝縮したものだろう。

 カカシには──写輪眼には、湖底よりも奥深く、まるで機を窺っているように潜む《力》の核らしき物が見えていた。
 嵐としか思えないこの現象も表面に漏れ出した余波に過ぎず、本体が解き放たれたらこんなものでは済まないとわかる。

 アウムが碑文を曲解し、先走って条件の揃わぬまま解放して幸いだった──のかもしれない。
 たが、心からそう思うには、この《力》を封じ込めなければ。
 そして、その為だけでなく、イルカとマナが無事でなければ。

「……そういやぁ、あの碑文が刻まれてた丸い石って?」

 イルカとマナの血に反応し、アウムと共に水流に飲まれたあの碑石が、不意にカカシの気にかかった。

 あれは、ただの碑石ではない。
 アウムはまるで《力》へ命令を伝える物のように扱っていなかったか。
 この暴走のきっかけともなったが、なんらかの繋がりがあることは確かだ。

 アウムと碑石を攫った水流は一度崖の向こうに消え、また天空へ昇って本流へ合流した。
 碑石が流れに飲まれたまま本流にあるのか、それとも流れからこぼれて崖下に落ちたのかは分からない。

「くそっ! どっちだ!?」

 判断に迷うカカシの視界に、思いも寄らぬ光景が写った。

 隆々と立ち上がる水柱に、細い2本の水流が襲いかかっている。
 本流に触れる度に勢いを奪われ、細くなっていく反抗する水流に、わずかだが霧隠れの双子のくのいちらのチャクラが潜んでいた。
 
 
write by kaeruco。
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