You'll never walk alone
□青く深き王国
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術の反動で再び上空に放り上げられていたナルトは再度、今度は碑石に向けて螺旋丸を放とうと影分身の印を組む。
だがその前に、一筋の水流が碑石を抱きとめるように包み込んでいた。
『もういい。ありがとう、《クムリポ》』
誰かを労うイルカの声が、ナルトには確かに聞こえた。
清廉な輝きが碑石から溢れ出し、あれほど禍々しかった血色が荒い流されていく。
そして、全てが静かにゆっくりと落ちていった。
碑石も。
ナルトも。
空に向けて立ち上がっていた、全ての水流も水柱も。
島の頂上、内輪湖に。
湖面が近づいたところで、ナルトはチャクラを足裏に集約して水面に着水した。
碑石はそのまま、湖底へと沈んでいく。
「ナルト、無事じゃったかっ」
「パックン!」
峰から小さな身体を弾ませて、忍犬が駆け下りてきた。
その背後には、マナを背負ったカカシの姿もある。
「なあ、イルカ先生はっ!?」
けれど、さっきまでの荒れ方が信じられないほど凪いだ湖面を見渡しても、イルカの姿は見あたらなかった。
「イルカ先生ーっ!!」
何度大声で呼びかけても、答える声は返らない。
「……ナルト」
不意にかけられたパックンの声は慰めではなく、注意を促す色を含んでいた。
「何か、浮いてきておる」
言われて目を凝らせば、湖の中央に何かが浮かび上がってこようとしているのか、波紋が立っている。
忍犬が止める間もなく、ナルトは確信を持って駆け出していた。
「イルカ先生っ」
信じた通り、イルカが仰向けに浮かび上がってくる。
ぼんやりとした視線を中空にさまよわせているが、怪我などはない。
「イルカ先生ーっ!!」
「うわっ!? ちょ、こら、ナル、ト、ま、おぼ……コラーッ!!」
嬉しさだけで飛びついてくるナルトの勢いを受け止めきれず、2人して溺れかけている。
それでもナルトは抱きついて離れず、イルカもなんとか体勢を立て直して教え子の頭を撫でた。
「よかった、イルカ先生が無事で、本当によかったってばー!」
「まったく、お前は……」
そんな2人のじゃれあいをカカシとパックンが安堵と呆れが半分の笑顔で、マナは心から微笑ましく眺めている。
こうして、かつて礁の国を滅ぼした脅威は復活することなく、島にはひとまずの平和が戻った。
【終章へ】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2012/07/21
UP DATE:2012/07/22(mobile)