You'll never walk alone
□青く深き王国
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外の騒ぎに気付いたシズネが、執務室の窓からその光景を見て悲鳴を上げていたから。
火影執務室に通されたてマナはまずイルカへ謝罪をした。
「すみません。突然、あんなことを言ってしまって」
その言葉にほっとしただろうイルカへ、マナは続ける。
「でも、あれは本当のことなんです。60年前に、私たちの祖母がした口約束ですけど」
「はあ……」
婚約者ということが嘘ではないことを念押しされ、イルカは複雑な顔をした。
女性に慕われることはいい。
だが、一方的な約束ででは、手放しでは喜べない。
そんなイルカの心情を察したのか、それとも予想していたのか、マナは種明かしをするように話し始める。
あなたのお婆様にあたる方が、私の祖母の姉なのです。
「うみの家の方と一緒に島を離れる時に、孫かひ孫を娶わせようと約束をしたのだと聞きました。多分、お互いに生き延びて家族に恵まれて暮らせるようにという願いからだったんでしょう」
その言葉に、この里では一人の肉親もいないイルカは驚いた。
「じゃあ、私たちは親戚、ということになるんでしょうか?」
どこか嬉しそうな声に、マナも微笑む。
「ええ」
互いに微笑みあうマナとイルカを見て、綱手はなるほどと思う。
肌と髪の色だけではなく、イルカは男らしくマナは女らしい作りではあるのだが、どことなく顔つきも似ていた。
「で、お嬢さん。態々、イルカを探しに来たのはその約束のためかい?」
「いえ。改めて名乗らせていただきます。私は水門(みなと)マナ。遥か南の亡国、礁の国よりうみのの血を引く方を探しに参りました」
「礁の国? 波の国よりも南の島国だったねえ。だけど、確か60年くらい前だったか?」
「火影様は、礁の国が滅んだ理由をご存知で?」
「いや」
「少し長くなりますが、お話します」
60余年前、南の小国であった礁の国は大陸で起こっていた大戦の煽りを受けていた。
周辺列強から併合の打診があるかと思えば、国境を近隣の同盟国に侵略される。
そんな中、国を治める者たちは国力を安定させる為にある物に目をつけた。
それは禁忌とされていた《力》。
古き習慣を守ろうとする者たちは反対をした。
しかし抗いきれず、礁の国はその《力》を手にしたという。
「けれど、大きすぎる《力》は御することが出来ず、暴走しかけた《力》を封じたときには礁の国は殆ど海中に没していたと……」
その後、国を失った人々は世界に散っていったという。
「私は僅かな土地に残った人々からこの話を受け継ぎました。そしてイルカさんが……」
「木ノ葉へ流れ着いた者の末裔、ということになりますね」
イルカは自身の知らなかった出自に驚きながらも、冷静だった。
「私は幼い頃に肉親と死に別れてしまって、そういう話を聞いたことがなかったので」
「そうですか……」
残念そうなマナの様子に、イルカと綱手は確信を強める。
マナはうみのの血を引く者を連れ帰りたいのではないのだろうか。
「あなたがイルカを探しに来たのは、60年前に封じた《力》に関係があるようだな」
綱手は自分の考えを纏めるように呟く。
「多分、封印を成したのは、うみのと水門(みなと)だった、というところか……」
「その通りです」
マナははっきりと顔を上げ、告げる。
「今、《力》の封印が解かれようとしています」
write by kaeruco。
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