You'll never walk alone
□Sunshiny
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と、差し出されたのは梨の実。
ナルトがポケットから取り出したものだ。
「今日の任務でもっとたくさん貰ったんだけど、2個だけ、貰ったんだよ。だから1個、水筒のお礼と、おすそ分けだってばよ!」
ナルトは押し付けるようにヒナタに梨の実を渡し、彼女の傍らに水筒を置くと、自分も同じ木陰に並んで座る。
さっきと反対のポケットからもう1つ梨の実を取り出し、自分でかぶりついた。
「うん。うめー」
腕の半ばまで果汁でべとべとにしながら、ナルトは本当に美味しそうに梨を食べている。
その様子にヒナタも果実を口にした。
「……おいしい……」
「だろっ」
1口齧ると果汁が溢れでるみずみずしい果実。
脱水症状を起こしかけていたヒナタの身体が回復していくようだ。
しかもすっきりと甘く、えぐみや酸味は殆ど感じない。
2人は言葉も交わさず、あっという間に梨を食べてしまった。
「ありがとな、ヒナタ」
「え?」
自分が言おうとした言葉をかけられ、ヒナタは戸惑う。
だが今度はすぐに、水筒のことだと合点が行く。
「いいの。私こそ、ありがとうナルトくん」
ヒナタに礼を返されて、ナルトは首をひねる。
しばらく考えて、ようやく梨のことだと見当をつけた。
「別にいいってばよ! こっちこそ、ありがとなっ」
じゃ、オレ行くから。
言ったと同時に、ナルトは眩しい日差しの降り注ぐ方へ駈けていく。
完全に気配が感じられなくなるまで見送って、ヒナタは大きく息を吐いた。
まだ身体は回復していないが、気力は充実している。
何もしてはいない。
ただ1人で食べるはずだった梨を2人で食べただけ。
それだけなのに。
ヒナタは傍らに置かれた水筒を手にとり、1口水を含む。
口に残る果汁のべとついた後味が流れていく。
けれど、何かが確実にヒナタに残った。
───もう、大丈夫……
落ち着いたら、あの日差しの下、家へ帰ろう。
【了】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]
WRITE:2004/10/18
UP DATE:2004/10/18(PC)
2009/02/13(mobile)
【Sunshiny】 日光のような 日なた 朗らかな
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