You'll never walk alone
□ダンデライオン
1ページ/2ページ
ダンデライオン
〜 dandelion 〜
いつもの道。いつもの時間。
踏み固められた道の端、積み上げられたガラクタの陰にタンポポが咲いているのをサスケは見つけた。
そのやたらと見慣れた色に無意識に足が止まる。
「………フン」
花の色や形だけでなく、置かれた状況が誰かに似ているのだろう。
近頃は最も身近で見かけるようになったその人物を思い出したのか、この場にサクラでもいたならば(内なるサクラが)、大暴走でも起こしそうな微笑みを浮かべ、サスケはその場にとどまっていた。
しかし、好事魔多し。
とでも言おうか、覚えのある気配が近付いていることに気付く。
「………! チッ」
別に顔を合わせたくない相手ではないが、かといって積極的に親しくしたいとも思わない。
自分を立ち止まらせた花に一瞥をくれると、気配を消してその場を離れた。
しばらくして姿をあらわしたのは日向ヒナタであった。
きょろきょろと落ち着き無く周囲を見渡すと、先ほどまでサスケを引き止めいた花に気付く。
そして、ほうっと安堵の息を吐いた。
腰のポーチから移植ゴテを取り出し、半ばガラクラに覆われたタンポポの周囲を掘り始める。
どうやら以前に見かけてから気になっていたようで、今日はついに思い余ってどこかへ植え替えようとしていた。
だが長い年月をかけて踏み固められてきた道は、下忍とは言え子供が移植ゴテで掘り返すには手ごわく、作業は遅々として進まない。
やがてゆっくりと日が影ってきたが、それでもヒナタは手を止めなかった。
「あっれーっ、ヒナタじゃねーか! なにやってんだってばよっ?」
突然、通りがかりのナルトから声を掛けられ、ヒナタは慌てた。
よっぽどタンポポの移植に気をとられていたのだろう。
まったく隠す気のない、逆に自己主張の強すぎるナルトの気配に気付いていなかったのだ。
「あ、あのっ……」
言葉に詰まり、赤面するヒナタをいぶかしむ様子もなく、ナルトは無遠慮に彼女の手元を覗き込む。
「んん? ヒナタ、それってどーすんだってばよ?」
「……え?」
ヒナタの手には、土に汚れた移植ゴテが握られている。
そして足元にはわずかに周囲を掘り返された、タンポポが一株。
夕方のまだ肌寒い風に揺れるその花と、夕日よりも赤いヒナタの顔をナルトは見比べた。
「もしかしてヒナタ、コイツ植え替えてやろーとしてんのか?」
ヒナタはおずおずとうなづいた。
「そっかー。でもよー、ヒナタ。コイツの根っこってすっげー長くてよー、すんげえ深く掘んなきゃなんねーんだってばよ」
「え。……そう、なんだ……」
「だからさ、こーんなトコでもコイツはちゃんっと生きてけるんだってばよ!」
ナルトの言葉に、ヒナタは居たたまれなくなる。
自分のしたことは無駄だと言われたような気がして、今すぐここから逃げ出したくなっていた。
そんなヒナタの態度を察したのか、それとも素直に思ったコトなのかナルトが満面の笑みを向ける。
write by kaeruco。
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]