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□チョコレイト・ディスコ
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スクールデイズ 3
チョコレイト・ディスコ
 
1:チョコレートに込めるのは



 1月の終わり、馴染みのファミレスのいつものテーブルには珍しく帯人とカカシだけがいた。

 どうやら時期的に女性である倫には聞かれたくない話をするらしい、と呼び出された帯人は察している。
注文したのも大盛りポテトフライではなく、ドリンクバーと軽食───帯人はナポリタンでカカシはサンドウィッチだ。
帯人がドリンクバーへとパシってコーヒーとジーザスブレンドのグラスを持って戻ると、カカシはおもむろに口を開く。

「イルカくんからバレンタインデーに本命チョコを貰う方法を考えろ帯人今すぐに」

「だが断る!」

 予想にたがわず、相談というには威丈高なカカシの命令に帯人は真っ向から拒否を示す。

「勿論、タダとは言わない。見返りにお前の相談にのってやるよ。どうせ倫から義理でもお情けでもいいからチョコ貰いたいんだろ?」
 
「お前が愛読する自来也先生著作の成年指定図書由来なアドバイスなんざ実際の恋愛に何一つ役に立たねえっていい加減自覚しろバカカシ。いや、お前がオレにやらせようとしている事をまんまイルカくんにしてみるといい。多分、オレへのお仕置きは倫様ご本人直々にしていただけるだろうからある意味ご褒美だが、間違いなくお前への報復はむくつけき保護者会のお兄様方によるエグい複数プレイだ。よかったな。ざまぁ」

 帯人の容赦ない反撃に珍しくカカシが押し黙る。
店員が注文した軽食を運んできたタイミングで成年指定の愛読書を恋愛マニュアルにしている事を暴露され、保護者会からのおぞましい反撃も想像させられるダメージが重なったせいかもしれない。

「だいたいさ、カカシ。お前、イルカくんと未だに知り合いですらないって理解してるか?」

「うっ……」

 怯むカカシへ間髪を入れず、帯人は現実を突きつける。

 飛び抜けて頭がいい筈の幼馴染みは、自身に都合の悪い事をまるっと無視した妄想だけで物事を推し進める悪癖があった。
それでもカカシに好意や敬意を抱く者友人や後輩ばかりの部活動や委員会、サークル活動なら大した問題ではないし、何かしら起こったとしても元々やるべき事が限定されているから想定内の出来事だし随時対応可能。

 しかし、かつてない現状───カカシに好意を抱いていない相手に対する恋愛事情となれば話しは別だ。
カカシ自身の言動はどう考えても裏目にしか出ない。
もし帯人がカカシの妄想と暴走に常識と現実との妥協点を見出して手綱を取っていなければ、カカシの恋はとっくに玉砕して下手をすれば将来毎木っ端微塵に粉砕されているはずだ。

「今、お前が考えなきゃいけないのは、イルカくん保護者会からの悪印象を和らげていずれはイルカくんと交流しても良いと思わせる為の行動だ」

 現段階ではバレンタインにチョコレートを貰う算段など百年早いと言外に告げる。

「えー」

「だけどな、オレも健全で健康な男子大学生だ。好きな子からバレンタインデーに本命、いや義理でもいいからチョコが欲しいという気持ちは同じなんだよ」

 不満を露わにしたカカシを宥めるように、帯人が持ちかけるのは自分にも利のある方法。
 
 
write by kaeruco。
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