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□バースデーがのしかかる
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バースデーがのしかかる
【誕生日を知らない編】
Suite Sweetness
〜 overture 〜



 夕暮れの帰り道、連れ立って歩く初めての部下3人の会話に、カカシが割り込んだ。

「今日って、イルカ先生の誕生日……なの?」

「そうだってばよっ!」

 元気よく返す子供は、とにかく構ってもらえる事が嬉しいらしい。
 他の2人が、急に話しに割り込んできた上司兼教官の上忍に胡散臭そうな目を向けていることに気付かずに。

「でもさ、折角オレがたまには一楽で奢ってやろーって思ったのに、イルカ先生ってば忙しいから今度なって……」

「仕方ないじゃないの、本当にこの時期って先生たち忙しそうだし」

 呆れたというより、お姉さんぶって唯一の女の子が諭すのを、もう1人が最もだという表情で見ていた。

「だってよ、こんな日じゃねーと、イルカ先生に、お礼とか、言いにくいじゃんよー」

 だが、照れくさそうに素直な気持ちを吐露する仲間に、その子供も眉間の皺が解れていく。
 
「……そう、だな」

「そ、そう、よねえ」

 慌てて同意する女の子の内面では、なにやら激しく雄たけびが上がっている気がするのは、カカシだけのようだ。

「で? どーしよーってワケ?」

 そのまま3人でイルカ先生のお誕生日を祝う計画でも立てかねない部下たちへ、冷ややかな上司の問いかけが降り注ぐ。

「それはー」

「……」

「ええっとぉ……」

 こういったことには知恵の回らない2人と、恐ろしく頭の回転は早いくせに乗り気でないらしい1人が口ごもった。

「ま、お前たちの気持ちはイルカ先生だって嬉しいだろーさ。でも、お仕事なら邪魔すんじゃーなーいよ? ん?」

 黄色い頭をあの先生がするように、少し乱暴に撫でてやりながら、カカシは続ける。

「近いうちに、みんなで喜ばせてやろーじゃないの。オレも協力すっからさ。じゃ、今日はここで解散」

 有無を言わせず、背中を押し出してやれば、ばらばらと子供たちは帰途に着く。
 けれど明日も遅刻するなよーと釘をさせば、見事なユニゾンがこだました。

「「「それはこっちの台詞だ」ってばよ」よーっ」
 
 更に続く言葉に手を振って応え、小さな背中たちが夕闇に見えなくなるまで見送る。

 そのまま、カカシは夜の暗さに半ば支配された空を見上げた。

「……誕生日、ねえ」

 どうしてか、あの中忍先生のこととなると自分はおかしい。
 カカシには自覚がある。
 今日だって、子供たちと一緒になってイルカを祝いたい気持ちがあったのだ。
 それなのに何故か、自分1人で、彼を祝いたくなって……。

「……困ったな……」

 けれど、いざ1人でとなると、一歩も進めない。
 第一、どう祝っていいのかも分からない。
 それに、これから贈り物など、用意できそうにもない。
 ようやくカカシが教員室で残業するイルカの元へ赴いたのは、それから随分経ってからだった。

 
【了】

WRITE:2005/05/24
UP DATE:2005/06/01(PC)
   2009/05/26(mobile)

 
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