拍手倉庫

□ショコラ
10ページ/10ページ



ショコラ
 
僕らの境界


「ハイ、ナルト」

 そう言ってサイが差し出した華やかな包みを、ナルトは素直に受け取れなかった。

 だって、今日は2月14日。

 異国から伝わった恋人たちのイベント。

 バレンタインデーだ。

 そんな日に、明らかにバレンタイン仕様のラッピングを施された包みを同性から差し出される。

 困惑しない人間は、もうお幸せにと言うしかない。

「えぇっと〜、サイ? これってぇ〜」

「バレンタインデー」

 何か別の意図があるのか願いながら尋ねれば、即答。

「オ、オレに〜?」

「そう。ボクから、ナルトへ」

 いつもと同じ笑顔からも、何を思っての行動かは分からない。

 なにしろ、言動が非常識で、空気の読めないサイだ。

 本か噂でバレンタインを知って、何か勘違いをした可能性が高い。

 絶対、そうだ。

 そうであって欲しい。

「なぁ、サイ? なぁんでオレにバレンタインな訳?」

「サクラが」

「サクラちゃんが?」
 
 やっぱり、情報源はサクラ。

 また図書館ででも会って、いらない知識を植えつけてくれたのだろう。

「今日は好きな人や、お世話になってる人にチョコレートを渡して、気持ちを伝える日だって」

「へ?」

「……何か、間違ってたかい?」

「いぃいや、全然、全く、なぁんにも、問題ないってばよー!」

 なんだ、そうか、とナルトは安堵する。

 きっと義理チョコとか友チョコ。

 それなら、と素直にサイからのプレゼントを受け取った。

「サンキュー、サイ」

「どういたしまして」

 微笑み返すサイの顔はいつもより、ずっと自然だ。

「ボクも嬉しいよ」

 きっと、本当の笑顔だからだ。

「ナルトがボクの気持ちを受け取ってくれて」

「……へ?」

 
ホワイトデーに続く
‡蛙娘。@ iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2009/02/12
UP DATE:2009/02/12(mobile)
 
 
ショコラ

前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ