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□季節のカカイル
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春のおはなし
眺めのいい丘 大門から通じる道を眺められる丘。
花がほころびかけた頃から、ここへ通うのが日課になってしまった。
あの人は満開になったら戻りますよ、と笑って里を後にした。
その言葉のせいだ。
がらにもなく花の開花を待ちわびたり、花が開き始めればいつ満開になるのかと気がそぞろとなったりしたのは。
「カカシ先生?」
背後から懐かしい、けれどまだ馴染みの薄い少女の声。
振り返り、片手を上げる。
「や!」
「どーしたんですか、こんなところでー」
自分に並ぶ少女の背は、あの頃とさほど変わらない。
当然だ。
まだ、数ヶ月も経っていない。
けれど酷く遠い日々。
あの頃の仲間は、今はもう、里にいない。
共にあった期間はわずかだけれど、かけがいのない時間。
3人の子供たちと、2人の大人たちにとって。
「んー? 日向ぼっこ」
「はい、嘘」
花曇の空の下、少女は笑う。
「嘘じゃなーいよ」
待っているのは、たった1人。
自分だけの、太陽。
【了】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2005/03/30
UP DATE:2005/04/14(PC)
2008/11/27(mobile)