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□季節のカカイル
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秋のおはなし
大地のささやき 火影岩の上に広がる森は里よりほんの少しだけ早く秋が訪れる。
だが、里全体を見下ろし、幾つかの重要施設が置かれている為、限られた者しか立ち入ることはできない。
そんな人気の無い清廉な少し冷たい空気の中、イルカは大きく息を吐いた。
「たまの使い走りも、こういう役得があるといいよなあー」
見上げた空は青く澄み渡っている。
雲は高いところでわずかに薄く波を描く。
視界を彩るのは、赤く黄色く色づいた木々。
耳を澄ませば、ことりと木の実の落ちる音まで聞こえそうだ。
森中に季節の実りが溢れ、多くの生き物たちがそれらを求めて動き回っているはずなのに。
あまりに静か過ぎて、ゆっくりと感覚が麻痺していくようだ。
柔らかな落ち葉の上に腰を下ろし、イルカはまた息を吐く。
森は眠るだけなのだ。
新たな季節を迎えるために。
「ほんの少しだけ……」
近付く足音に、ゆっくりと目を閉じる。
【了】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2005/10/23
UP DATE:2005/10/23(PC)
2009/01/27(mobile)