拍手倉庫
□季節のカカイル
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秋のおはなし
昔からある場所
「持ちますよ」
イルカの両手を塞いでいた買い物の荷を片方引き受け、カカシは自分の手を空いた手へ滑り込ませた。
一瞬、眉をしかめて何か言いたそうにしたイルカも、結局は何も言わずに歩きつづける。
見上げた空は夕暮れに染まり、夕日を受けた歴代火影の顔岩は黄金色に輝いているようだ。
しかし里の周囲を囲む森は既に暗く、道の脇の街灯もまだどこか頼りなく感じる明かりを灯しだしている。
晩秋の風の冷たさと繋いだ手の暖かさに、こうして手を繋いで歩くのは初めてだったかなと気付く。
「ねえ、イルカ先生ぇ」
「なんですか、カカシさん」
「こういうの、なんか、いいよねえ」
「たまには……」
照れ隠しなのか、イルカは言葉を濁すけれど、繋いだ手はそのまま。
互いの手はずっと前からあったものだけれど、自分の居場所になったのはつい最近。
でも、いつかきっと、昔からあった場所になるだろう。
【了】
‡蛙娘。@iscreamman‡
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WRITE:2005/10/23
UP DATE:2005/10/23(PC)
2009/01/27(mobile)