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□ボクの先生はヒーロー
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ボクの先生はヒーロー
 
36 僕はここにいるよ



 ゆったりとたゆたいながら浮上するぼやけた意識が最初に知覚したのは、音。
 もう、朝なのか。
 だとしたら、目覚まし時計はどこだろうか。
 そんなことを寝ぼけたまま呟きながら、徐々に明瞭になる頭の端では、自分の目覚まし時計はこんな騒がしく色々な音がしただろうかと思う。
 まるで、大勢の人のざわめきみたいだ。
 もしかしたら、とっくに起きるべき時間を過ぎていて心配した誰かが自室を訪ねて戸を叩いているのかもしれない。
 サクラやサスケ、まさかとは思うがカカシも。
 とりあえず、時計はどこだったろうか。
 確か、この辺り……。

 寝ぼけたまま、いつもの自室のつもりで動いたナルトの右手は、ふにりとした柔らかく温かいなにかに触れた。
 気が、した。
 途端。


「なにしてんのよっ、このエロナルトーッ!!」


 サクラの怒号と強烈な打撃が覚醒しかけのナルトの脳を激しく揺さぶる。
 結果、再び意識を失った。



「……あWー。なんか、頭が、ぐわんぐわんするってばよー……」

 むくりと起き上がったナルトは赤く腫れ上がった額を押さえてうめく。
 傍らでは腕組みをしたサクラが同期のくのいちを庇うように憤然と睨みを利かせ、口元を隠しながらもどこかいやらしい含み笑いを滲ませたいのが彼女とナルトを窺い見ていた。
 少女2人の背後からは不安げに胸に両手を当てたヒナタがなぜか真っ赤な顔でナルトを覗き込んくる。
 寝台の反対側には呆れ顔のサスケとシカマル、なにやら嬉しそうなチョウジとニヤニヤしたキバと赤丸。
 それと、表情ぬ読み取れないシノ。

 同期下忍が全員集合しているこの状況がまったく把握できず、ナルトは盛大に首を傾げながら仲間たちを質問責めにしていく。

「なあなあ、なんで、みんないんだ? てゆーか、どこだってばよ、ここ? って、なんでオレってばずぶ濡れなんだってばよーっ!?」

 どうやら、里と彼の身に起こった大事件は、何一つナルトの記憶に残っていないようだった。
 
「なあ、サクラちゃーん! なんでオレこんなとこにいんだっては? サスケ! 教えろよー。シカマルー! チョウジは? キバは? 赤丸はー?」

 ナルトの追求を怒りを露わに無視したり、呆れた風にあしらったりしながら、仲間たちは誰も真実を告げない。
 ただ互いに顔を見合わせて満足げに頷きあい、安堵した笑みを交わすだけ。

 1人除け者のナルトは、苛立ちを爆発させて叫ぶ。

「もーっ! なんなんだってばよーっ!!」

「ナルト!」

 突如降ってきた懐かしい声に、下忍たちは揃って入り口へ向き直って、言葉を失った。

「イルカ、せんせ……い?」

「良かった、みんな無事だったんだな」

 そう言って心底ほっとした笑顔を浮かべるかつての恩師は、応急処置はされているものの全身傷だらけだった。
 ふいに、下忍の班編成の朝を思い出す。
 あの時もイルカはこんな風に包帯だらけで現れたが、当事者であるナルト以外はその理由を知らない。

「イルカ先生が一番無事じゃないってばよっ!」

 ナルトの指摘に下忍たちは揃って同意を見せ、同時にそれぞれが動き出す。
 ナルトの寝台傍らに椅子を出す者、医療班を呼びに行く者。
 普段、上忍師には突っ張った態度をとるサスケやシカマルですら、イルカには素直に気遣う言動を見せる。
 そんな彼らの自発的な行動に感心しつつ、ここまでイルカに肩を貸して来たカカシも安堵の息を吐いた。

「ま! 全員無事でなにより」

「だーかーらー、何があったんだってばよーっ!?」

「ナルト」

 いまだに状況が掴めずにいるナルトの頭を、仲間たちを頼もしげに見つめていたイルカがいつものように撫でる。

「なに? イルカ先生?」

「良かったな、本当に」

 なにが、とは言わない。
 イルカも何があったのか語らないのかと落胆しつつ、ナルトははっきりと頷いた。

「おう」

 自分を見るイルカが心から嬉しそうだったから。

 
【続く】
‡蛙娘。@iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2011/11/30
UP DATE:2011/12/05(mobile)

 
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