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□若葉繁れる
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若葉繁れる
 
思い出



「イルカ先生ー」

 ドアの前に気配がしたと同時に、ノックと声。

 急いで開けてやれば、大きなダンボールを抱えたカカシが立っている。

「どうぞ、カカシさん」

「はーい、お邪魔しマース」

 いそいそと上がりこみ、カカシは抱えていた箱を下ろした。

 その、随分と埃を被った箱を眺め、呟く。

「えーっと、多分、大丈夫、だと思うんですけど……」

「確認しますか?」

「はあ」

 用意していた雑巾で埃を拭き落とし、イルカは箱を開けて中身を確かめ出す。

 長い間、けれどきっと大事に保管されていたらしく、予想していた傷みはなかった。

「大丈夫なようですね」

「そうですか」

 気恥ずかしげな、どこか安堵したような、カカシの声。

 部屋に広げるには大きすぎる見事な手描きのこいのぼりを手に、イルカは微笑む。

 これはカカシのもの。

 20年以上、使われてはいないけれど、幼い頃から忍として生きてきた彼の、数少ない子供時代の品だった。
 
「立派なものですねえ」

 用意してくれた人の願いや思いを示すようで、イルカは嬉しく、カカシは照れくさい。

 だからと言って、照れ隠しというにはカカシの発言はいただけない。

「いやぁん、イルカ先生ったら大胆〜

 
【了】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2005/04/25
UP DATE:2005/05/09(PC)
   2009/04/28(mobile)
 
 
若葉繁れる

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