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□ママの歌
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ママの歌
 
Mother Complex



 教え子というものは、かつての恩師で最も印象に残った人を母親のように慕い続ける──らしい。

 そのことはカカシ自身も経験があることだから、長年教師をしている恋人が多くの教え子たちから慕われているのは、まあ納得できる。

 慕ってくる教え子の多さは、それだけいい教師だったのだという証明だから、それもまあいい。

 問題なのは、数。

 そして、新密度。

 特に我慢ならないのは、会う度会う度、恋人にタックルかましてきやがる──初対面で「1番好きなのはイルカ先生と食べる一楽のラーメン」とほざいた、自身最初の教え子だ。

 自分へも多少の尊敬は向けてはくれるものの、その他の扱いというものに格差がありすぎる。

 そして恋人のほうでも、その教え子は特別だったからか、何事につけて優先してやっていた。
 
 例えば、任務で長く里を離れる時にはわざわざ見送ってやったり、怪我をして戻ってくれば病院へ駆けつけたり、食事や家事の世話もしてやったりしているらしい。

 今日だって、そうだ。

 母の日だけど自分は母親の顔も知らないから、と赤いカーネーションを届けにきた教え子とラーメンを食べに行ってしまった。

 久々に顔を合わせた恋人をほっぽって。

「イルカ先生」

 しばらくぶりに大事な教え子と好物を堪能して満ち足りた顔で戻ってきた恋人に、カカシはできる限り平然とした声で告げた。

「オレのことどー思ってんです」

「アンタ、母親取られた子供みたいな顔してますよ」

 そう言って、カカシの恋人は男らしく豪快に笑った。


 
【了】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2005/05/07
UP DATE:2005/05/09(PC)
   2009/04/28(mobile)
 
 
ママの歌

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