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プレゼント
〜イル誕2009〜



悪い虫
〜18才〜



 アイツの誕生日は、知り合いとすれ違う度に祝いの言葉がかけられる。
 それにお前はいちいち律儀に立ち止まり、照れくさそうに喜んで礼を言う。
 昔からいつも仲間たちの中心にいて、今も変わらず人気者。
 毎年、それを隣で見てきた。

 心の奥底で嘲笑いながら。

「なあ、知ってるか」

 3代目のお気に入りだもんな。
 誰だって、お前に悪く思われたくないんだよ。
 里のお偉いさんに可愛がられてるお前の口から、要らないこと言い触らされたくないんだ。

「オレは……」

 オレだってそうさ。
 そうだったんだ。

 3代目に目を掛けられてるお前の友人なら、上層部の覚えも良いだろうって考えてたんだ。

 別に、お前と友達になりたかったわけじゃない。

 みんな同じだ。
 みんな、お前が……。

「……大っ嫌いだっ」

 憎んですらいる。
 目障りなんだ。

 おかしいじゃないか。
 おまえなんかがアカデミーの教師なんて。
 
 昔、お前は落ちこぼれだったじゃないか。
 オレのほうがずっと優秀なんだ。

 アカデミーの頃から、お前の面倒を見てやったのはオレじゃないか。

「なあ、イルカ……」

 ひどく惨めなんだよ。

 だってオレは知ってるんだ。
 お前は良い奴だって。
 努力家で、そのくせ不器用で、底なしのお人好しだって。
 大事な友達だって。

 なのに、思っちまうんだ。
 なんでお前がって。

 こんなの、あんまりじゃないか。
 オレがかわいそうだ。

 だから、お前を見てると、むかつくんだ。


 
【続く】

WRITE:2009/05/19
UP DATE:‐/‐/‐(PC)
   2009/06/02(mobile)
 
 
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