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□Date Of Birth
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Date Of Birth



プレゼントは……食べ物編

Suite Sweetness
〜 2nd season 〜 



「イルカ先生」

 アカデミーを出たところで、耳慣れた声に呼び止められた。
 いつの間にか隣りに立つ人へ、イルカは微笑みかける。

「カカシさん」

 教え子を介して知り合った元担任と現教官の2人。
 けれど今はもう、何故ここで会うのかと問う間柄ではない。
 仕事終わりに行き会えば、食事や酒を共にすることも多くなっていた。

「今日はどうしましょうか?」

「付き合って貰えます? ちょっと、いいのも飲みたいので」

「ええ、俺でよければ」

 連れ立って歩きながら、イルカはいい酒を飲みたくなるようなことがあったのかと聞いてみた。

「なにか、良い事でもありましたか?」

「んー、良い事ってゆーか……」

 決まり悪げに頭をかきかき、カカシはぼつりともらす。

「……誕生日、なんですよねー」
 
 言われて一瞬、イルカの足が止まった。

 ほんの少し前にあるカカシの背を見て、思い出す。
 この男から最初の好意を向けられたのは、自分の誕生日だった。

「そう、でしたか。おめでとうございます」

「ありがとうございます」

 足を緩めようとするのに追いつき、訊ねる。

「じゃあ、何が食べたいですか? って、もしかして店決めてます?」

「いえ。できたら……、イルカ先生、作ってくれませんか?」

「俺が、ですか?」

「はい」

 馴染みの商店街へ足を向けながら、イルカは必死で自分にできるものを思い返す。

 こんな時間では食材も揃わないし、1人暮らしが長いといっても男の料理だ。

「たいしたものはできませんよ」

 そんな予防線を張っておくしかできない。
 だが、カカシは真面目な声で、嬉しそうに言った。

「俺にとっちゃあ最高のもんです。なんなら一生でも、いいですよ」


 
【了】 

WRITE:2005/09/02
UP DATE:2005/09/24(PC)
   2009/09/04(mobile)
 
 
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