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□二十歳の頃
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二十歳の頃
 
カカシ



「よ、おめでとサン」

 ぽふっと、後ろから頭の上になにかが置かれ、カカシは振り返ることなく不機嫌な声を上げる。

「なによ、アスマ」

「祝いだ」

 とっとけ。

 言い捨てて、アスマはカカシを追い抜いて待機所へ消えた。

「なに?」

 歩き読んでいた本を閉じて、頭に置かれたものを取る。

 タバコだった。
 それも、普段アスマが吸っている銘柄。
 というか、パッケージは開いていて、中身は1本しかない。

「…祝い?」

 首をひねるが、祝われるような心当たりはなかった。

 比喩でなく──とうの昔に上忍になっているし、誕生日は4ヶ月前。
 彼女ができたり、嫁が来た覚えもない。

 強いてあげれば、年越しで着いていたAランク任務から無事に戻ったことぐらい。

 ほてほて歩いて待機所へ入り、謎な贈り物をしてくれやがった悪友へ問う。

「アスマー、コレなぁにーぃ?」
 
「祝い、つったろ」

 言いながらアスマは新しく封を切ったタバコを咥え、火をつける。

「新成人」

「ナニ?」

「今日は成人の日だろーが」

 で、オメェ去年二十歳んなりやがったろ。

「よーやく、オメェも経歴に年が追いつきやがたって言ってんだよ」

 ふー、と盛大に紫煙を吐き出してアスマは苦笑を見せる。

 その顔が、中身はまだガキだけどよ、とでも言っているようだった。

 カカシは精一杯、平坦な声でささやかな反撃にでる。

「アスマはまだまだ外見と年が釣り合ってないよーね」

「お。言うようになりやがったなぁ」

 まるで三十路を越えたかのような良い男っぷりを既に身に付けていた一つ違いのアスマには、カカシのガキ臭い一撃など痛くも痒くもなかったのだけれど。

 それは、6年前のお話───

 
【了】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

WRITE:2005/01/06
UP DATE:2005/01/22(PC)
   2009/11/16(mobile)
 
 
二十歳の頃

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