カカイル2

□悪魔は雨に歌う
1ページ/3ページ



悪魔は雨に歌う
〜 天使のような悪魔 〜

〜 10周年お礼:未完挿話 〜



 在宅の仕事と極度の女性不信のおかげで一端の自宅警備員なカカシの部屋に、悪魔を自称するイルカと名乗る男が住み着くようになったのは数週間前の出来事だ。
 どうして───という経緯に関してはあまりにもお粗末な顛末であるから割愛して理由だけを有体に言えば、契約同棲である。

 ヲタクなカカシと悪魔なイルカの暮らしは、案外平穏に過ぎて行く。

 たとえば、食事。
 イルカの語るところによれば、悪魔が地上で人間に紛れて暮らす際には契約者から生気や精力を摂取して自身の活動エネルギーとするらしい。
 摂取方法は契約者との霊的な繋がりから常に最低限の供給がされるが、できるなら数日おきに直接摂取したいとのこと。
 それはつまり、カカシ自身がイルカの食事であり、だいたい3日おきに《食事》が行われる。
 念の為に明言しておくが、カカシの貞操はどちらもまだ無事である。
 かろうじて、だが。

 直接的な《食事》の気恥ずかしさに耐えかねたカカシが、普通の食事は必要ないのか、と訪ねたことがある。
 普通の食事はできるがエネルギー変換の効率が悪く、食材によっては摂取するより消化吸収にかかるエネルギーが上回ってしまうのだと答えが返った。
 ついでに植物性より、動物性の食材の方がエネルギーになりやすいのだとも。
 ただオカルト小説や漫画でよく描かれているように、塩気の強い食べ物がダメなどというタブーもないらしい。

「名高い聖地で徳の高い魂を持つ者が聖別された器で汲み上げて祈祷した聖水やら、同じように正しく用意された若水でも混入されたらちょっと困りますけどね……」

 カカシが夜食に作ったちぃっとお高いインスタント塩ラーメンのご相伴に預かり半分すすったイルカは声を潜めてそう言って、まずそんな物にはお目にかかれないでしょうけどと笑っていた。

 
 住処はカカシと同居、食事もまあ問題なし、となれば次に気になるのは衣服のことだ。
 自称悪魔なイルカであるが、やって来た当初こそどこぞの真っ黒な悪魔で執事な格好だったけれど、どうも本人は服装などに無頓着な質らしい。
 最初に着替えとしてカカシがイタズラ心から貸した十字架や聖句がデザインされたTシャツとジーンズを悪魔のくせに平然と着こなした。
 以来、ワードローブは二人で共有している。
 これは二人の体型がそう変わらないからできることで、自分には似合わない色やデザインでイルカをコーディネートするのはカカシの密かな楽しみとなった。
 同時に彼と並んで歩いた時に悪目立ちや見劣りなどしないよう、自分の身嗜みにも気を使うようになってきていた。


 * * * * *


 そんな日々を過ごして数週間。
 カカシはすっかりイルカとの生活に馴染んでいる。
 なにしろ自称とは言えイルカは悪魔。
 下手な事をして機嫌を損ねたら生命に関わるのでは、と恐れて色々と気を回したカカシの危惧は杞憂だった。
 
 

write by kaeruco。
[http://id54.fm-p.jp/120/iscreamman/]

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ