カカイル2
□今日のご飯がおいしいのはあなたが隣にいるからだ
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今日のご飯がおいしいのは
あなたが隣にいるからだ
〜 10周年お礼:新作(ラブラブ) 〜 はたけカカシとうみのイルカが知り合ってから、何年になるだろうか。
友人と言うにはお互いの立場や戦い生き抜いてきた経歴が違ったけれど、共通の教え子たちに関わる悩みや心労を共有しているからだろう。
里の者が見かける頻度として月に1度か2度、彼らは酒食を共にしている。
然程多い訳ではないが、不思議と彼らの交遊は途切れず、続いている。
そのせいなのか、彼らは時々思い出したように同僚たちから似た疑問を繰り返し投げ掛けられていた。
───なぜ、あの人とそんなに親しくしているのか?
カカシにはなんの取り柄もなく階級も下の男を気に掛ける物好きさへの呆れや、あわよくば自分がその立場に成り代われるのではという期待に満ちた目で迫る。
イルカへは上位者との誼を羨んでか侮蔑を含んだ目を向けながら、自分もどうにかその恩恵に預かれないものかと下心の潜んだ顔で擦り寄る。
正直、2人とも辟易としている。
カカシとイルカが出会った経緯だとか懇意にしている理由など、この木ノ葉隠れの里に限らず殆どの忍が知っているはずだ。
あの戦いの最中に何もかも曝け出されてしまったのだから。
木ノ葉隠れの里で一番の落ちこぼれを何くれとなく世話を焼いてアカデミー卒業を認めたのがイルカで、その後を引き受けて下忍として育てた上忍師がカカシ。
今や忍世界の英雄と祭り上げられている1人の少年を介して知り合い、当初は誰にも見向きもされなかったあの子供をそれぞれ別の立場で支えて来たのが彼らだ。
2人にしか分からない共通の苦労も悩みも喜びや楽しみがあって当然。
「……ですから、オレとしては……なーんで、アナタ、との、付き合い、を……他人に、とやかく、言われなきゃ、ならないの、か……分かりません……」
ささやかなイルカ宅の食卓で、カカシはしみじみと呆れを含んだ愚痴を溜息とともに吐き出す。
普段、顔の下半分を覆い隠している覆面はなく、端整な口元に米粒を付けたまましっかりと咀嚼しながら。
「ま、傍目から見れば、確かに、とも思いますよ。でも、いい加減にして欲しいですよねー?」
口中の物を飲み込んでからニッと良い笑顔を向けるカカシへ手を伸ばしたイルカは、彼の口元に付いた米粒を取り去った指を自分の口へと持って行く。
多分、第3者が見ていたら驚愕に恐慌を来たすであろうその仕草を彼らは何の気なしに行い、また受け入れていた。
「鬱陶しく絡んで来る奴らのお陰で、こうしてイルカ先生のご飯食べられるんだと思えば、感謝もしますげど」
そう言ったカカシは箸を伸ばして根菜と鳥肉の煮物を盛った大鉢から程良く味の染みたレンコンを摘まむと、ひょいと口へと放り込む。
彼の言葉に軽く頷きながら相槌を打っていたイルカは香ばしく焼いたアジのミリン干しの半身を囓る。
カカシは煮過ぎていない根菜の歯触りを楽しむように噛み締めながら、続け様に白飯を掻き込んで口いっぱいになっているイルカを面白そうに見やった。
write by kaeruco。
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