カカイル2
□雪囲い
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自分では分からないが、きっと口布越しでも分かるくらい、マヌケな顔をしているんだろうとカカシはぼんやり考えていた。
どこか楽しそうな、呆れたような声でイルカは狭い雪洞へ這い進んできて、隣りに腰をおろす。
「任務ですよ。すぐ麓の村でしてね。まあ、雪ほり、なんですけど」
「雪掘り、ですか?」
「雪放り、です。雪掻きとか雪下ろしとか言ったほうが分かりやすいですかねえ」
「そーうですねえ」
豪雪地帯では、もう雪を掻くとか下ろすとかの次元ではない。
とにかく、邪魔にならない場所へ放るだけだ。
そんな説明をするイルカから伝わる温もりに、カカシはこの状況が都合のいい夢でも幻術でもないと実感していた。
「でも、なんで、こんなとこにまで?」
「……この辺で戦闘があったでしょう? 麓に音が響いてたんで、雪崩れでも起きないかって警戒しにきたわけです」
「で、オレを見つけちゃった、と?」
「……はい。もしかしたらって、思ったんですけどね。まさか、アナタだなんて、ねえ……」
明後日の方へ頷くのは、多少の気恥ずかしさからだろう。
薄暗い雪洞の中でも、カカシの目にはいつもより赤みの強いイルカの耳が見えている。
ふと、カカシの脳裏に憧れのシチュエーションが閃いた。
猛烈な吹雪に囲い込まれ、ロッジに取り残される恋人未満な2人が互いの本音を追求しあうこともなく、暖めあう──という、妄想。
思いついた瞬間に脳が沸騰するような目眩に襲われながら、カカシはイルカの肩を抱き、耳元へ囁いた。
「……寒く、ない、ですか?」
「ええ、これくらいなら平気です」
オレだって中忍ですしね。
「一応、零下15度までならこの装備でも1晩過ごせますよ」
「ですよねーえぇ……」
朗らかなイルカの言葉に不埒な妄想を一撃で打ち砕かれ、心で号泣しているカカシの返事に力はなかった。
同性なんだしたまには男心も察してくれよ、という愚痴が脳裏に吹き荒れる。
大体、カカシには男のロマンというものがありまくりだが、イルカはそういったことに疎いのか現実主義者なのか、2人の思惑はさっぱり噛み合わない。
これでよく、おつき合いなんかできるなあ、なんて儚く思ってしまうのもよくあることだ。
ただ、カカシの傷つきやすい男心を知ってか、イルカはにかりと笑顔を見せる。
「それに、こうして2人でくっついてますし……」
今、カカシはなんの作為もない、ただ真っ直ぐなイルカ気持ちに触れた気がする。
そして、じわりと熱を帯びる自分の気持ちに気付くのだ。
「くっ、ふ、ははは」
「なんです、急に」
結局、2人の間には1つの気持ちしかない。
それは雪のように時に押し潰すように重く、軽やかで美しくもある。
「イルカ先生はあったかいなあって」
強く抱きしめて、嬉しそうにいいながらカカシは思った
今は、互いを好きだという気持ちに包まれているだけでいい。
【了】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
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WRITE:2005/12/30
UP DATE:2006/03/03(PC)
2009/07/25(mobile)
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