カカイル2
□Love & Peace
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Love & Peace
〜 nartic boy 20,000hits 〜 特定の誰かが自分の全てになる。
そんなことは恋愛小説の中でしかないと思っていた。
憧れは、ある。
それほどに想い合える相手との出会いに。
だが、実際にそんなことになったらと考えるだけで恐ろしかった。
この気持ちに気付いた瞬間は、忘れられない。
飲んでいて───確かナルトの『おいろけの術』での悪戯からの流れかなんかで、好みの女やこれまでにつきあった人の話になった。
「ははは。まあ、自分にないものを求めてたのかもしれないです」
猪口を呷る仕草で決まり悪い顔を隠しながら、ぽつりぽつりと話していた。
「でも結局、長続きしなくって」
1人と付き合う期間が短く、切れてもすぐ次とくっつくオレの女性遍歴は派手な方らしい。
そういったことには潔癖そうなイルカ先生に話すのは、少しだけためらわれた。
こんな稼業だ。
想いを通じ合わせた相手と、次の瞬間には死に別れるかもしれない。
誰にだって、その可能性はある。
だけれども、自分たちには普通に生きてる奴らに比べて、より近しいものだ。
常に頭に置いていなければならず、隣り合わせと言ってもいい。
そのせいか、昔からオレの周囲に居る奴らは大抵、刹那的だった。
ガキの時分に見たのはそれだけの、その場だけの関係ばかり。
ただ、逆に1人に決めると互いの絆は酷く強いように感じた。
だからいつかは、自分もそんな相手を見つけられたらいい。
そんなことを、なんの思い入れもない関係に耽りながら、ぼんやりと願ってきた。
いつしか手にするようになった成年指定の恋愛小説に理想を夢見ながら結局、現実の刹那的でふしだらな生活に落ち着いていたけれど。
「近頃はすっかりご無沙汰デス」
冗談めかして苦く笑うしかない。
「そうですか。オレも、似たようなもんです」
黙ってオレのくだらない話を聞いていた人も、ぽつんと言った。
「だんだん、麻痺してくるんですよね……色んなことに」
「へえ」
同意されても、意外な気がした。
「もうすっかり1人に慣れて、そっちのほうが楽かな、なぁんて思ったりもしますよ」
イルカ先生はオレたちと違ってもっと人間らしく生きていると思っていた。
些細なことに泣いたり笑ったりしながら、淡い気持ちを大事に育てていく。
純真で誠実な、小説の主人公のように。
でもよく考えてみれば、階級や戦歴以外は違いもない。
同じ忍びで、同世代の男同士。
多かれ少なかれ、子供の頃から多くのものを失い続けてきた。
似たような経験をして、同じような考えを持っていたとしても不思議はない。
なのに、頭の隅か身体の奥で、何かがざわりと蠢いた。
イルカ先生が抱く女を想像した瞬間に。
けれどその時は、それがなんなのか分からないまま、気にもとめずにいた。
上忍師として初めて部下であり教え子である下忍を預かったばかりの頃だ。
write by kaeruco。
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