カカイル2
□手紙
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手紙
〜 When I'm 64 〜
〜 2009 カカ誕 〜───この手紙を見つけた人へ
どうか燃やして、
誰にも話さず、
忘れて下さい───
そんな書き出しで始まる、まるで遺書のような、手紙。
誰に宛てたでもない、当時の心情を書き綴っただけの、多分、遺言。
個人を特定できる物事は、何1つ記されていない。
筆跡も、変えてある。
それでも、イルカには分かった。
これが、はたけカカシの書いた物だと。
曖昧に記録された短い人生に沿うのは、自らを責める後悔と慚愧の言葉ばかり。
イルカの手には、そんな手紙が26通。
折々のカカシがしたため、隠してきた遺書。
偶然、見つけたのではない。
枕元に並べられた本の埃を払っている途中、ふいに思い出したのだ。
いつだったか、危険度の高い任務から満身創痍で戻ったカカシが譫言で囁いた一言を。
───オレ、が……だら、枕、元の……貰って、やって……
その時は縁起でもないと憤りながら、今際の際までそれかと呆れた。
なにしろ、枕元に並んだ彼の愛読書は成年指定のいかがわしい描写ばかりの官能小説。
それに満身創痍と言っても、いつものチャクラ切れで身動きがままならないだけ。
酷く心配はしたが、命に関わることではなかった。
だから、長いこと忘れていたのだ。
そんな事が───イルカがカカシの愛読書を形見に貰い受ける事は、そうそう有るはずがないと思い込んで。
それを、思い出してしまった。
ずいぶん前の話だから、もうそこにカカシの想いはないかもしれない。
こんな本を託すなんて、と軽い気持ちで手に取っただけだった。
中程のページに挟まれていた、1通の封書を見つけるまでは。
宛名も、差出人もなく、封すらされていない白い封筒。
透かし見れば、文字の書かれた紙片が入っている。
多分、カカシが託そうとしたのはこれだったのだ。
しばらく悩んだ末に、イルカは思い切って封筒から紙片を取り出し、読んだ。
そして、後悔した。
書かれていたのは、見つけた人間への頼みが2つ。
彼自身の事が数行。
それだけ。
頼みの1つ目は、この手紙を燃やして、忘れてくれということ。
1つ目は、過去に書いた手紙もできたら処分して欲しいということ。
彼の事は、年齢から始まっている。
これは去年の物だ。
忍としては過分に幸せな人生だと始まり。
できるならこのまま、愛する人と静かに暮らしていきたいと願い。
けれど、忍の宿命もあるし、きっとそれは叶わないだろう、と締められている。
淡々と箇条書きに記された、寂しい手紙だ。
どこにも、彼と共にある者への言葉はない。
カカシは、これをイルカが見つけることも、最期の時まで共にあることも、期待していないのだろう。
こんなのは、酷い、とイルカは激昂した。
同時に寂しさに打ちのめされて、声も出ない。
自分はカカシにとって何だったのか。
気づいたら、里中に隠されていたカカシの遺言を探して回っていた。
それぞれの隠し場所は、前の手紙でほのめかされている。
write by kaeruco。
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